2012年1月20日金曜日

ランキングはロック・マニアの性癖

 悠々自適ライフではあるのだが、たまたま頼まれごとを引き受けてしまい、来週半ばまでちょっと忙しくしている。久しぶりの頭脳労働。
そのため「日記」と銘打ってはいるけれど、少し更新に間が空きますので、このブログの更新を楽しみにしているみなさま(はたしてそんな人いるんだろうか)、しばしご容赦を。
というわけで、今日は小ネタで。

他の「マニア」は知らないが、少なくともロックのマニアは、何でもランク付けするのが大好きだ。プログレバンド・ベスト5とか、ギタリスト・トップ10、とか、ビートルズのアルバム・ベスト3とかいう具合。私も、このブログをはじめてから、すでに何回かそういう言い方を使ってしまっている

高校生の頃、なけなしの小遣いで買えるレコード(その頃は、まだLPレコードの時代だった)は、月にせいぜい1枚。昼飯をパン一個くらいで我慢すると、何とか2ヶ月で3枚買えた。
それに対して、欲しいレコードは星の数ほどあった。1970年代の初頭である。今振り返ると、ロックの歴史に残る名盤が毎月ぞろぞろと発売されていた時代だった。
そこで欲しいレコードをリストアップする。そして、その中で買う優先順位を、ああでもないこうでもないと検討するのだ。『ミュージック・ライフ』や『ニュー・ミュージック・マガジン(当時はまだ「ニュー」がついていた)』の新譜紹介の記事を目を皿のようにして読み、友人から情報をきいたり、すでにその候補のLPを持っているやつがいれば借りて聴いて、必死で優先順位を決めていた。
リスト内での順位争いはかなり厳しく、しかも競争相手が次々に新たに加わってくるのである。万年2番で、ついに買わずじまいになったのもあった。フーやキンクスやジェスロ・タルなんかまでは、なかなか行き着けなかった。

そして、リストを見事勝ち抜いたレコードを買うわけだ。レコードを買ったときのうれしさ。学校帰りに買って、大事に抱えて帰る(何しろ30センチ×30センチだからね)。家についてそっと袋から出してターンテーブルに乗せるときのわくわく感。
持っているレコードの数も少ないから、ほんとになめるように聴いた。あの頃聴いたギターのフレーズは、すみずみまで全部口で言える(弾けないけど)。ジョージ・ハリソン、クラプトン、ジミー・ペイジ、テリー・キャス、マーク・ファーナー…。

大人になってから、あの頃のリストにあったもののほとんどをCDで手に入れた。何だかトラウマになった心の空洞を埋めていくような感じがした。しかし、悲しいことに聴くときの集中力は、なめるように聴いたあの頃にはかなわない。それにあんまり枚数が増えすぎちゃって…。

必死で作るランキング。多かれ少なかれ誰もが同じような道を通ってきたのではないか。そのせいで、ロック・マニアはランクづけをしないではいられなくなってしまったのではないか。ちょっと強引かな。
そして、このランク付けの性癖は、ロック内に留まらず人生で出会うさまざまなものにも及ぶことになる。

ロック・マニア(たぶん)のジョン・キューザックが製作し主演した映画『ハイ・フィデリティ』は、そんなマニアとしての私のツボにはまる映画だった。
中古レコード屋のオーナーの三十男が、失恋をきっかけにこれまでに経験した自分の「辛かった別れトップ5」をリストアップ。そして、その5人の別れた相手を順に訪ねて、自分のどこがダメだったのかをきくというお話。
自分の失恋もランキングしてしまうというマニア気質が笑いどころだが、共感もしてしまう。ロック・マニアには、ぜひ一見をお勧めする。

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