2012年1月16日月曜日

「情けない」ロックバンド

私の「情けない」ロックバンド・トップ3。

第3位はイエス。
第2位はジェネシス。
オールドロックファンなら、だんだん何のことか判って来たでしょう。

複雑に入り組んだ音空間を構築し、その中を軽々と疾走していたイエスの爽快感。それが、あのバグルスと合体して、気の抜けたポップ・サウンドに走るなんて。
そして、暗くて重苦しいイギリスの湿った霧の中に、人間の深淵を描いて見せたジェネシス。それが、あんな薄っぺらいクズのようなポップ・ソングのバンドになるとは。
ピンクフロイドとか、ロッド・ステュアートを4位、5位にしてもいいかな。

これはつまり、初めの頃は、志の高いミュージシャンシップあふれる素晴らしい音楽をやっていたのに、やがてお金に目がくらんで、悪魔に魂を売り、売れ線の音楽に走っちゃった人たちのランキングです。

そして、「栄光」の第1位は、シカゴ。

お金に目がくらむのは人として仕方ないことでしょう。誰もそうなんだから。誰にもその変節を攻めることはできない。
しかし、それまでの志が高かっただけに、聴いている方としては、とにかく残念なのだ。恨み言のひとつも言いたくなる。

ただし、シカゴだけは重罪だ。だって、「反体制」を売り物にしてたのに、それが体制側に寝返って、金持ちになったわけで…。
自由を抑圧する既成の価値観に対する疑い、若者を圧迫する政治権力に対する反発と抗議。シカゴのごく初期のアルバムは、そんなアグレッシブなエネルギーにあふれていた。
それが、やがて甘ったるいラブソング路線に転向し金儲けに走ったのだった。たぶんメンバーたちも、自分たちのこの変わり身に平気ではいられなかったでしょ。モラルが崩壊して、退廃がやってくる。私の大好きだったシカゴのギタリスト テリー・キャスは、その頃にロシアン・ルーレットで頭を吹き飛ばして死んだ。退廃の果てと言う感じだ。

今になってあの頃の「反体制」は、たんなる売るためのイメージだったのさ、とメンバーは言っているらしい。自分たちの変節の見苦しい言い訳としか聞こえない。が、仮にそのとおりだったとしても罪は重い。あの頃の彼らの姿勢に共感して、希望を託して聴いていた若者がたくさんいたのだから。

シカゴのファーストアルバム『シカゴ・トランジット・オーソリティ』は、デビューアルバムにして2枚組というボリュームで人を驚かせた。もう言いたいことがいっぱいという感じ。
時代認識に対する疑いを歌った「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」、時代の不安を音にしたかのような「フリー・フォーム・ギター」、現実に対する違和感「サウス・カリフォルニア・パープルズ」、そして体制側の弾圧に対する抗議「1958829日シカゴ、民主党大会」と「流血の日」と「解放」。

やっぱりこれらは今聴いても、その思いが瑞々しく伝わってきて熱い気持ちになる。たぶんこの時は、この人たちも本気だったんだろうな。だから許してあげよう。その後が、どんなに無様なことになってしまったとしても。こんな音楽を残してくれたことに感謝。まあ、あとはよしなに。

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