2012年2月29日水曜日

エリック・クラプトンのアルバム5選

私がロック少年だった1970年代の初め頃を思い出してみると、当時のエリック・クラプトンがまさかこんなに長い間活躍し、大物になるなんて想像もできないことだった。
ギタリストとして一世を風靡していたクリームが、1968年に解散してからの活動がぱっとしなかったからだ。
クリーム解散後、ブラインド・フェイス、ソロ・アルバム、そしてデレク・アンド・ドミノスとして出したアルバムが、クリーム時代のような熱い演奏を期待する者には、どれも今ひとつだった。そしてそのうちにドラッグでリタイア。ちょうどあのころはクラプトンのそんな時期だったのである。
当時の思い入れはいろいろあるのだが、今現在のクラプトンはずいぶん遠い人になってしまった。はっきり言って、昔のクラプトンとは別人である。

2005年にロンドンとニューヨークで、クリームの再結成コンサートが開かれた。一説には、クラプトン以外のメンバーであるジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーの経済的困窮を救うために行われたとも聞く。そういう先入観があるせいか、映像で見ると、歳をとって衰えたジャック・ブルースと、渋くはあるが元気一杯ではつらつとしたクラプトンとの対比があまりにもくっきりとしている。
このときのクラプトンのプレイは、なかなか見ものだった。手堅いのは当然としても、奏法が千変万化して、三人で演奏していることは同じなのに昔よりもかなり多彩な音の世界を作り出していて見事だった。
しかし、そこに昔のようなドキドキするインタープレイのスリルがないのも事実。やっぱり昔のアルバムを聴いていれば十分だな。

というわけでクラプトンのアルバム・ベスト5を選んでみることにした。

【エリック・クラプトンのアルバム・ベスト5<オモテ編>

『カラフル・クリーム』(クリーム)
『スーパー・ジャイアンツ』(ブラインド・フェイス)
『いとしのレイラ』(デレク・アンド・ザ・ドミノス)
461 オーシャン・ブールヴァード』
『アンプラグド』

まあこんなもんでしょうね、誰が選んでも。そこが選んでいて何とも面白くない。そこでもうひとひねりして、ごくごく私的なもうひとつのベスト5を選んでみた。

【エリック・クラプトンのアルバム・ベスト5<ウラ編>

『ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』(ジョン・メイオールズ・ブルースブレイカーズ)
『ホイールズ・オブ・ファイア(クリームの素晴らしき世界)』(クリーム)
『ライヴ・クリーム VOL.2』(クリーム)
『ライブ・アット・ザ・フィルモア』(デレク・アンド・ザ・ドミノス)
『レインボー・コンサート』

 何だかどれも脛(すね)に傷を持っているようなアルバムばかりだな。以下はそれぞれについてのコメント。<オモテ編>は誰もが認める名盤なので、あえてひとこと悪口を書いてみる。

【クラプトンのオモテ・ベスト5 コメント】

『カラフル・クリーム』(クリーム)
 サイケデリック再評価で、いつの間にかクリームの最高傑作と言われるようになっていた。ジャック・ブルースの曲がどれも魅力なし。演奏とソング・ライティングでクラプトンが光る。

『スーパー・ジャイアンツ』(ブラインド・フェイス)
メンバーが豪華なのにひどく地味な内容。曲数が少ないうえに駄曲多し。フォーク風味が味わい深い。

『いとしのレイラ』(デレク・アンド・ザ・ドミノス)
発表当初は酷評されたのに今は名盤。前半のラブ・ソングがたるい。クラプトンのギターが丸い。

461 オーシャン・ブールヴァード』
 クラプトンのゴリゴリのギターを聴きたくて買ったのだったが……、無惨に轟沈。当時の私は全然レイド・バックしていなかったので。ヤケクソで「アイ・ショット・ザ・シェリフ」は繰返し聴いた。

『アンプラグド』
高品質AORアルバム。オシャレ過ぎで聴いているのが気恥ずかしい。でもやはり「ティアーズ・イン・ヘブン」はしみる。

【クラプトンのウラ・ベスト5 コメント】

『ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』(ジョン・メイオールズ・ブルースブレイカーズ)
クラプトンのというより、ブリティッシュ・ブルースの名盤。
クラプトンが独自のギター奏法を確立したアルバム。今彼のやっているブルースはぐっとマイルドだけど、この頃のクラプトンの演奏はやる気満々で鋭角的でガッツがあった。

『ホイールズ・オブ・ファイア(クリームの素晴らしき世界)』(クリーム)
すっとクリームの最高傑作と言われてきたが、最近は『カラフル・クリーム』にその座を奪われてしまった。がんばれ。
曲のできは、でこぼこ。ライヴ盤のB面「トレインタイム」とその後のジンジャー・ベイカーのドラムソロなんて勢いのみの迷演だ。
しかし、クラプトンの「クロスロード」は掛け値なしの名演。何度聴いても4分間の魔法だ。

『ライヴ・クリーム VOL.2』(クリーム)
クリーム解散後に出たアルバム。なので「余りもの」の寄せ集め?と思われがちで世間的な印象は薄い。しかし、ファンにはうれしい有名曲がいっぱいのライヴ・アルバム。
クリームのライヴはメンバー三人の演奏がどんどんばらばらに分解していって、曲としての形がよくわからなくなる感がある。しかしこのアルバムの大半の曲は、一体感のあるグループとしての魅力にあふれた演奏だ。
しかし、5曲目「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」の終盤で助走を始めたクラプトンは、最後のブルース曲「ステッピン・アウト」でついに爆発。13分半のこの曲の最初から最後まで延々と弾きまくる。たぶんクラプトンの生涯の名演の一つに数えられるだろう。そして、この曲がクリームの最後の作品となったのだった。悲しい。

『ライブ・アット・ザ・フィルモア』(デレク・アンド・ザ・ドミノス)
ドミノスのライヴ・アルバムだ。先に出た『イン・コンサート』の拡大盤。ビートを細かく刻むソウル・ファンク的な展開が印象的。

『レインボー・コンサート』
ピート・タウンゼンド、スティーヴ・ウィンウッド、ロン・ウッド、ジム・キャパルディといったブリティッシュ・ロックのスターたちがバックをつとめる。彼らが、麻薬のためにリタイアしていたクラプトンの復帰を支援するために開いたコンサートのライヴ。
豪華メンバーのわりに当のクラプトンが不調で、世間的にはあまり評判のよくないアルバムだ。だが、私は好きですね。
寄せ集めメンバーゆえのルーズでゆるい演奏には、ブリティッシュ風味がある。それがクラプトンの(不調のせいの?)哀愁あふれる歌と演奏とにぴったりマッチしていると思う。「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」は泣ける。

次点『ノー・リーズン・トゥ・クライ』
AOR歌手と化したソロ時代のクラプトンにはもう何の興味もない。このアルバムの次の『スローハンド』以降のソロ・アルバムはみんな処分した。
このアルバムを捨てなかったのは、ひとえにザ・バンドとディランが参加しているから。クラプトンというよりは、ディラン/ザ・バンドのアルバムとして聴いている。

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