2012年6月12日火曜日

東京散歩「ステータスのある街(?)を歩く」 南青山から、西麻布、広尾を抜けて恵比寿へ

6月上旬のある日、ちょっとした用件があって久しぶりに東京に出かけた。
 近ごろは東京に出て時間があると、あちこち歩きまわっている。今回は、南青山、西麻布、広尾と「高級感」漂う街を歩いてみたので、その様子を紹介することにしよう。

以前は、東京で時間があくと、展覧会を見るか、あるいはCD屋をめぐって中古CDを漁(あさ)るのが常だった。しかし、この頃は、見たいと思う展覧会もめったにないし、CD屋めぐりの方も軍資金が乏しいためあまり熱が入らない。
そこで、以前から好きだった街歩きが復活したわけだ。「街歩き」とか「散歩」というと聴こえは良いが、実際はただ歩き回るだけというのが正しいかもしれない。

もともと東京のガイド・マップというのが好きで何種類も手元に持っている。新宿とか渋谷とか銀座といったエリアごとに地図があって、その街の概要と、ショッピングと食べ物の情報と、散歩ルートとかが載っているようなたぐいのものだ。
そういう情報を頭に入れて実際に歩いてみると、たいていはがっかりする。東京の街は、どこもたいていはごちゃごちゃした普通の通りだからだ。地方の街の風景とそんなに変わらない。期待し過ぎるこちらが悪いのだけれど。
それで、ここではなるべく見たまま思ったままを記してみることにする。

今回は渋谷の宮益坂で用を足して昼食を食べた。
それから、青山通りを表参道の方に向かって歩き、マックス・マーラの角を右に曲がって骨董通りに入る。この通りから一本路地を入ったところにある画廊で、知人が個展を開いているのだ。
作品を見せてもらった後、知人と1時間ばかり歓談して会場を後にした。これで、今日の用件はおしまい。時間は3時ちょっと過ぎ。これから散歩タイムだ。

今日考えているコースは、画廊がある南青山から、西麻布を通って広尾を抜け、恵比寿に至るコースだ。
南青山、西麻布、広尾と言えば、いずれおとらぬ「オシャレ」で「高級」な、「大人」の街ということになる。
かつて広尾で画廊を開いていた知り合いの画廊オーナーの言葉を思い出す。いわく「ステータスのある場所」。
彼は地方でやっていた画廊をたたんで、東京に店を移した。なぜ東京でも広尾を選んだのか尋ねたところ、彼はこう答えた。
「ともかくステータスのある場所でやりたかった。23区で言うと港区か千代田区か大田区。そしたらここにいい物件があってね」。
よく聞く話ではあるが「ステータスのある場所」という言い回しがちょっと印象に残った。
この言葉を借りると、南青山、西麻布、広尾はまさに「ステータスのある」街ということになる。さて実際に歩いてみると、どんなものなのか。

路地から骨董通りに出る。青山通りには戻らずそのまま南へ、六本木通りの方に歩いていく。
小原流会館や岡本太郎記念館の前を通り過ぎる。骨董通りというだけあって、古美術の店もちらほらあったが、あまり興味はわかない。あとは南青山といっても、ビルや事務所や飲食店が並ぶどこにでもありそうなごく普通の通りだ。同じ青山でも、高級ブランドのお店が並ぶ、表参道から根津美術館への道筋とはだいぶ違っている。

ほどなく六本木通りに斜めにぶつかって骨董通りは終わり。左に曲がり、今度は六本木通りに沿って歩いていく。
六本木通りは、その上の高架を首都高の渋谷線が走っている。しかも、道幅が狭いせいか、上り線と下り線が上下に重なって、地上も合わせると三階建て()の道路だ。その光景は、未来的と言えば言えるのかもしれないが、とにかく殺風景。
よっぽど右側の路地に入ろうかと思った。しかし何しろ西麻布初心者なので、ともかく少し先の西麻布の交差点まで歩いてみる。
六本木通りと外苑西通りが交差しているのが西麻布の交差点だ。左に曲がれば、青山霊園、まっすぐ行けば六本木、右に曲がると広尾がある。でもまあ普通のどこにでもある交差点だ。

ここを右に曲がって、今度は外苑西通りに沿って広尾方面に歩いていく。この辺も骨董通りと同様で、ビルが並ぶだけの普通の通り。外苑西通りは片側2車線で車がやたら多いが、歩道は狭い。狭い上に街路樹や電気設備のボックスなどが立っていて歩きにくいことこのうえない。六本木の歩道もこんな感じで歩きにくかった。
西麻布と言えば私には、クラブ(お酒を飲む高級なお店)やクラブ(踊る場所、昔のディスコ)がある街というイメージがある。
しかし昼間なので、クラブ(お酒の方)は全然目に付かない。表通りを歩いているせいもあるだろう。
クラブ(踊る方)はそれらしい建物がいくつかあったが、やっぱり昼間なので、ばっちりと閉まっていた。
ガイド・マップには、たしか西麻布は「隠れ家的な店が多いことで知られる」と書いてあったが、何しろ「隠れて」いるわけだから、やっぱり全然わからない。べつに入ってみようというわけじゃないんだから、どうでもいいんだけど。

歩いていると左側に少しばかりの緑が見えてきた。「笄(こうがい)公園」と書いてある。名前は由緒あり気だが、木立と遊具がある小さな普通の児童公園だ。しかし、ここが子供の声であふれている。
こういう公園は地方にもたくさんあるが、団地近くの場合を除いて、子供が遊んでいるのをあまり見かけない。田舎の子は、もともと少ないうえに塾と習い事で忙しいのだろう。やっぱり都会は違うなと思う

さらに歩いていくと広尾橋の交差点に到着。
ここには画廊を訪ねて何度も来たことがあるが、ぶらぶら歩くのは初めて。広尾というと、高級住宅地、また各国の大使館が集中するインターナショナルな街というイメージがあるが、見回したところあまりそんな感じはしない。
交差点の右奥に広尾プラザというビルがああって明治屋が入っている。明治屋というと京橋や日本橋の輸入食品のお店を思い浮かべるが、ここの明治屋は、ちょっとのぞいてみたところ高級なスーパーだった。なるほど高級住宅地なんだな。

広尾橋の交差点を右に曲がって広尾散歩通りに入る。いろいろなお店がごちゃごちゃ並んでいる。多少オシャレっぽいイタリアンの店なども目に付くが、そんなに高級感はない。東京近郊の中央線や私鉄沿線の駅前によくある商店街といった感じ。銭湯があったり、中華屋もあったりで、なかなか庶民的だ。
ぶらぶらしながら一本裏の狭い路地に入ってみる。
聖心女子大の高台を背にして、そのふもとに古そうな家がぎっしりと軒を連ねていた。お年寄りが家の前に椅子を出して休んでいる。まるで下町の風情で、ちょっといい。

広尾散歩通りは祥雲寺というお寺の入り口に突き当たって左に折れている。
道なりに曲がってそのまま恵比寿方面にまっすぐに進んでいく。フレンチやイタリアンのお店、カフェなどがちらほら目につくが中に入らなければやっぱり普通の通り。

広尾散歩通りは広尾五丁目の交差点で終わる。この交差点で明治通りを横切り渋谷川を渡って、道筋に沿って進んでいく。
社会教育館の交差点をさらにまっすぐ越えると恵比寿三丁目に入る。このあたりは昔から縁があって、じつはけっこう詳しい。少し行って最初の信号のある交差点を右に曲がる。

このあたりは住宅街だが、道の右側に「イニッシュ・モア」というちょっと有名なアイリッシュ・パブがある。前から一度入ってみたいと思っている。
私は、アイリッシュ・パブというものが好きで、フィッシュ・アンド・チップスを食べながらギネスを飲むのが何よりの楽しみなのだ。だが「イニッシュ・モア」は残念ながらまだ開店前だった。あきらめて先へ進む。
歩いていくと住宅の間から恵比寿ガーデン・プレイスのタワーが見えるそんなに広くないこの道は、ずっと行くとそのまま、ガーデン・プレイスの前のくすの木通りになるのだ。

4時半、ガーデン・プレイス到着。これで散歩は終了。南青山を出発してから1時間15分。まずまずの運動量だ。
「ステータスのある」高級な街を巡ったわけだけれども、表通りを通り過ぎただけではまったくそんな感じはしない。裏道を歩きまわり、それなりのレストランで食事をしたり、お店に入って買い物でもしないと、「高級感」は味わえないんだろうな(する気はないけど)、などとあらためて思った次第。

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