2012年10月14日日曜日

レッド・ツェッペリンのアルバム5選(前編)

いよいよレッド・ツェッペリンのアルバム5選をやってみることにした。
何で「いよいよ」なのか。ツェッペリンは私の大好きなバンドだ。このブログを始めてすぐの今年の1月に、さっそく2回ほどこのバンドについての話題を書いた。そのときツェッペリンについてはまだまだ書きたいことがある、と書いたのにそれっきりになってしまっていた。それで今回が「いよいよ」というわけだ。

ツェッペリンのアルバムは、後年の発掘ライヴ(BBCライヴ (BBC Sessions)』と『伝説のライヴ(How the West Was Won)』)を除けば、たった10枚しかない。
これまでにアルバム・ベスト5を選んできたストーンズやディランやクラプトンのように、何十枚もあるアルバムの中から5枚を選ぶというのなら、それなりの意味があるような気もする。しかし、そもそも10枚しかないアルバムから5枚を選ぶことにどれほどの意味があるのか、という疑問はある。
結局これは、私にとっての「おさらい」なのだ。ツェッペリンとは私にとって何だったのかを考えるための「おさらい」。だから、ツェッペリン入門者(そんな人いるのか?)のためのディスク・ガイドにはならないと思うので、あらかじめ御了承を。ツェッペリン入門者は、四の五の言わず10枚のアルバムを端から全部聴くべきだろう。

10枚から5枚を選ぶのはなかなか大変だ。5枚を選ぶというより、選ばない5枚を切り捨てることがつらい。
もっともこのバンドの場合、10枚の内の発表順で最後の2枚は、即、捨てても問題はないだろう。10作目のラスト・アルバム『最終楽章 (コーダ)』は、旧録のアウト・テイク集だし、9作目の『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』は誰もが認める(?)駄作だから。
で、残りが8枚。この8枚からどの3枚を捨てるか。
結果を先に言うと、私のベスト5アルバムは次のとおりになった。

<レッド・ツェッペリンのアルバム極私的5選>

第1位 『レッド・ツェッペリン ILED ZEPPELIN)』
第2位 『レッド・ツェッペリン III (LED ZEPPELIN III)
第3位 『聖なる館 (Houses of the Holy)
第4位 『レッド・ツェッペリン II (LED ZEPPELIN II)
第5位 『永遠の詩(The Song Remains the Same)』
次 点 『プレゼンス (Presence)

変わりばえしないように見えるかもしれない。あるいは「なんじゃこれは」、と驚かれる方も絶対いるだろう。
第5位のライヴ盤『永遠の詩』は、5作目の聖なる館』発表後のツアーのライヴだから、強いて言えば5作目の関連作品。
つまり、私のベスト5枚は、1作目、2作目、3作目ときて4作目をとばし、次の5作目とその間連作を選んだということになる。
4作目の『レッド・ツェッペリン IV』をなぜとばしたのか。そして6作目以降の『フィジカル・グラフィティ』と『プレゼンス』はなぜ入らなかったのか。
選からもれたこの3枚は、ファンなら承知のとおり、3枚ともツェッペリンの最高傑作の座を争っているアルバムである。それを全部はずすとは、何たるへそ曲がりなランキングなのだろうか。
以下落選の理由を説明してみよう。

<ベスト5落選の理由>

『レッド・ツェッペリン IV (LED ZEPPELIN IV)

一般的にはツェッペリンの最高傑作と言われているアルバム。
たしかに「ブラック・ドック(Black Dog)」と「天国への階段Stairway To Heaven」」は文句なしの名曲だ。
しかしこのアルバムの残りの曲の大半は、ひねりが効いていなくて聴き所のない平板で単調な曲ばかり。
まずボーナムのどたばたドラムのせいで、テンポは速いがスピード感のない「ロックン・ロール(Rock And Roll)」がそうだ。そして「ミスティ・マウンテン・ホップ(Misty Mountain Hop)」も、「フォア・スティックス(Four Sticks)」も、「レヴィー・ブライクス(When The Levee Breaks)」なんかもみな平板。
これでは代表作というにはちょっと苦しいのでは。

『フィジカル・グラフィティ(Physical Graffiti)

このアルバムもしばしば代表作と呼ばれる。
新録8曲に、旧録のアウト・テイクを7曲加えた2枚組。いい曲もあるけどそうでない曲も多い。
LP1枚目のA面冒頭が「カスタード・パイ (Custard Pie)」。続く2曲目が「流浪の民 (The Rover)」。どちらも名曲だ。お、これはいいぞ、と最初に聴き始めたとき思った。しかし、その次がドタバタの「死にかけて (In My Time of Dying)」。ロバート・プラントはこの曲をひどく気に入っているらしいけれど、重苦しくてやたらと長い。

新録の曲だけで新譜にしなかった理由は何となくわかる。シングル・アルバムに収まりきらなかったというが、理由はそれだけではないだろう。
新録の曲は、「死にかけて」もそうだけど概して重ったるくてスピード感がなくて、しかも長大な曲が多いのだ。これだけでは、重苦しすぎる。
「カシミール(Kashmir)」がそうだし、「イン・ザ・ライト (In the Light)」、「テン・イヤーズ・ゴーン (Ten Years Gone)」、「シック・アゲイン (Sick Again)」なんかもそう。もっとも「トランプルド・アンダー・フット (Trampled Underfoot)」みたいに、軽いけど安っぽい曲もあるにはあるが。

これに対して私の好きな曲、たとえば、さっきの「流浪の民」や「聖なる館 (Houses of the Holy)」や「夜間飛行 (Night Flight)」などはみんな旧録のアウト・テイクだ。コンパクトな魅力にあふれている。
というわけでアルバム全体としては散漫な印象になっている。旧録のような曲がもっとたくさん入っていれば、5位以内入選もあり得たのだが。

『プレゼンス (Presence)

渋谷陽一が絶賛するとおり、何か吹っ切れて前向きの姿勢を感じさせるアルバム。これまでになかったような硬質でシンプルかつストイックな音作りだ。まるでジョン・レノンにおける『ジョンの魂』を思わせる。
しかしそれはあくまで「良く言えば」の話。悪い言い方をすれば、硬直していてニュアンスに乏しい演奏ということになる。
音にふくらみがない。ラストのブルースっぽい「一人でお茶を (Tea for One)」なんかも味わいの薄い面白味のない曲になっている。
でも、ベスト5からはもれたが、一応次点ということで。

『イン・スルー・ジ・アウト・ドア (In Through the Out Door)

これ駄作でしょ(?)。ジョン・ポール・ジョーンズ主導のアルバムらしいが、この人「職人」ではあっても、けっしてクリエーターではなかったということだ。
いったい誰がツェッペリンの演るサンバやカントリー&ウエスタンやラブ・バラードを聴きたいと思うだろう。まあそれには目をつぶるとしても、そもそもどの曲もあんまり出来が良くない。このアルバムには、これまでにない多様な音楽性があるというが、肝心の曲がだめだったら意味がないんじゃないの。
ボーナムの死とは関係なく、もうこの時点でツェッペリンは終わっていたということだ。

『最終楽章 (コーダ)(Coda)

アトランティックとの契約を果たすために旧録曲を集めて間に合わせで作ったアルバム。曲数も少なく作りも雑。できのいいアウト・テイクはみんな『フィジカル・グラフィティ』に使っちゃったんだから、いいものが残っているはずもない。

以上が落選理由についてのコメント。順番が逆になった気もするが、ベスト5アルバムについてのコメントは項を改めて、次回「後編」で述べる。

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