2012年10月9日火曜日

東京散歩「レンガ造りとB級グルメと隅田川」 丸の内から有楽町をまわって隅田川沿いを歩く

<丸の内で古い建築物巡り>

10月のはじめ、所用があって東京に出かけた。
用事があったのは銀座だが、その前に今話題の東京駅を見てみようと上野から山手線に乗り換える。
東京駅で降りて丸の内北口の改札を抜けると、もうそこからすごい混雑だ。復元された駅舎のドームの内側を見上げる人であふれている。こんなにたくさんの人がいっせいに真上に向ってカメラを向けているのを初めて見た。

6年間にわたる復元工事が終わって、この丸の内駅舎が公開されたのがつい数日前のこと。大正3年の創建時の威容を再現したドーム天井には優雅な彫刻や装飾が施してあってとにかく立派。でも当然のことながら新品同様、というか新品そのものだからピカピカしていて、古びた味わいはない。

そのまま駅舎の外へ出て外からレンガ造りの駅舎を眺める。ここもカメラを構えた人でいっぱいだ。駅舎の前の舗道部分だけでは眺めるのに引きが足りないと思っていたら、丸ビルとの間のロータリーにちゃんとヴュー・エリアが設けてある。JR偉い。
レンガ造りの駅舎は風格とロマンを感じさせて、やっぱりいいものだ。駅舎の前を通り丸の内南口のドームにも入って中を見てみた。

そこでふと思いついて南口の向かいにあるJPタワーの方に足を運ぶ。
JPタワーは東京駅の南西側に隣接する旧東京中央郵便局の跡地に建ったビルだ。といっても低層部分は歴史的価値が高いということで、旧郵便局舎をそのままの形で保存し、その上に高層ビルをのせた形だ。今年(2012年)7月にオープンしてちょっと話題になり、一度見てみたいと思っていたのだ。
旧東京中央郵便局の局舎は、昭和6年に建てられた建物とのこと。旧郵便局舎をぐるっとひとわたり眺める。石造りでそれなりに趣はあるが、さすがに東京駅には負ける。

そこからまたまた思い付きで、ちょっと先にある三菱一号館美術館にも行ってみることにする。思わぬ古い建築物巡りだ。
JPタワーの道を挟んだ皇居側が三菱ビル。そしてその日比谷側の隣が、丸の内パークビルだ。このパークビルの敷地の一画に三菱一号館美術館はある。
三菱一号館美術館の建物は、明治時代に建てられた三菱一号館というレンガ造りの洋館を再建して美術館にしたもの。2010年に開館。三菱一号館というのは、丸の内で最初の洋風貸事務所建築だとか。
館内には入らず、ぐるっと外側から見学。この美術館とパークビルとの間は、ブリック・スクエアというちょっとした広場になっている。おしゃれなカフェや樹木の合間にレンガの建屋が生えて風情がある。ビルの狭間とは思えないなかなかいい雰囲気の空間だ。

そこから隣の東京国際フォーラムを抜けて有楽町に向うことにする。ガラス棟とホール棟の間を歩いていく。先ほどまでとは打って変わって、超現代的な空間だ。これはこれで楽しい。
建物の間に、軽自動車の移動屋台村が出来ている。一台はスープ・カレーの屋台だった。行列が出来ている。私は大のスープ・カレー好きなのだが、大の行列嫌い。なので、食べてみたかったが残念ながらパスした。

<有楽町のB級グルメ その1>

そのままピック・カメラの前を通って有楽町駅方面へ。
そしてガード下の立ち食いの店「後楽そば」で「焼きそば」(340円)を食べる。ここの焼きそばは、B級グルメ界ではちょっとだけ有名。昔ながらのソース焼きそばだ。びっくりするほど美味しいわけではないが、そこそこ美味しい。B級グルメってだいたいそんなもんでしょ。

マリオンを抜けて数寄屋橋交差点から晴海通りを銀座方面へ。ここでわき道に入り本日の用向きを済ます。
再び晴海通りに戻ると、さらに築地方面に歩いていく。銀座から築地までは何度か歩いたことがあるが、意外に距離がある。大きな通りで、たいした見所もないから余計そう感じるのかもしれない。
築地の場外市場を通り過ぎると、広い場所にたくさんの折り畳みテーブルと椅子がセットしてあるのが見える。後でニュースで知ったのだが、翌日から築地祭りというのが開かれるらしい。場外市場で買ってきた魚を、ここで七輪で焼いて食べられるのだとか。一度やってみたいものだ。

<隅田川沿いを歩く>

勝鬨橋のたもとに到着。そのまま渡って月島を歩くつもりだったが、ちょっとくたびれてきたので、橋は渡らずにその手前を左に折れて隅田川のほとりを歩いてみることにする。
隅田川の川べりは「隅田川テラス」という名称で、遊歩道としてきれいに整備されている。歩道の左の陸側はレンガ積みの壁が続き、舗石はちょっと凹凸を残したしゃれた敷石だ。今日はいろいろとレンガに縁のある日だ。
右側は隅田川の広い川面。その向こうの月島には高層ビルがいくつも立ち並ぶ。その上には秋の青空が広がっている。涼しい川風に吹かれながら開けた空間を歩いていくのはじつに気持がいい。しかし平日とはいえ歩いている人は少なかった。東京駅の混雑がウソのようだ。

やがて左側に高々とそびえる聖路加タワーを見ながらその前を通り過ぎると、まもなく佃大橋のたもとに辿りつく。ここから橋の上を佃の方へ歩いていくことにした。

<佃島散策>

佃大橋の歩道からの眺めは、広々として気持いい。それにしても隅田川の広さをあらためて実感する。
佃大橋は昭和39年に出来た比較的新しい橋で、それまでは佃の渡しと呼ばれる渡し舟が行き来していたという。そしてこの橋の建設と同時に、佃島は月島と地続きになったが、それまでは完全に島だったわけだ。

隅田川を渡りながら落語「佃祭」のことを思い出した。
神田お玉ヶ池で小間物屋を営む次郎兵衛。祭り好きで、住吉神社の祭り見物に佃島に来ていたが、ひょんなことから渡し舟の最終便に乗りそびれてしまう。ところが、この舟が川の途中で転覆して、乗客は全員溺れ死ぬという悲劇が起こる。次郎兵衛は乗らなくて命拾いをしたのだ。
ところが、そんなこととは知らない次郎兵衛の留守宅と長屋の人たち。主人は死んだと思い込み悲しみにくれ仮通夜を営む。そこへ知り合いの船頭に小舟で送ってもらった当の次郎兵衛が帰ってきて大騒ぎという話だ。
橋から川を見下ろすと、たしかにこんなに川幅が広いところで舟が転覆すれば乗っている人は助からないだろうと納得する。

橋を渡り終えて左に曲がり川沿いを歩いていく。「佃祭」の話に出てくる住吉神社をお参りしようと思ったのだ。
ガイド・マップで見ると、このあたりには佃煮の老舗がいくつかある。いうまでもなく佃煮の名は、ここの地名に由来している。
街の裏手の細い路地のようなところに入り込んでしまう。てっきり、一本、道を間違えたかと思った。ところがたしかにそこに間口の狭い佃煮屋がちらほらあるのだ。
その先には川に向って鳥居が立っている。ここが住吉神社の参道らしい。しかし驚いたことに、そこから続いているのは普通の家が両側に並んでいるごくごく狭い路地だった。その先にはもう一つ鳥居があって確かに神社がある。
失礼ながら、それはどこにでもあるようなささやかな小さい社だった。一応お賽銭を上げてお参りする。
観光スポットとはとても思われないようなこのあたりの「ふつうの街外れ」というか「場末」というか「裏町」というか、そんな感じにちょっとびっくりし可笑しくなる。地図を片手に歩いているのは、かなり違和感がある。石鹸やタオルを入れた洗面器を抱えて銭湯帰りのおじいさんが路地を横切っていった。

こうしてあっという間に佃島観光は終了。さてこれからどうしよう。
月島名物もんじゃ焼きのお店が並ぶ「もんじゃストリート」も近くにあるが、べつだん興味がわかない。もんじゃ焼きは一、二度食べたことがあるが、そんなに美味しいものとは思わなかった。
それより何といっても食べてみたいのは、もうひとつの月島名物レバー・フライだ。佃大橋通りをもう少し先に行くと清澄通りにぶつかる。ガイド・マップによると、この清澄通りを左折して右側の小さな路地を入ったところにレバー・フライのお店があるらしい。

清澄通りは大きな通りで、この通りに面しyr建っているのはてマンションやビルばかり。一見したところ、こんなところに小さな店があるとはとても思われない。
しかし、マンションとマンションの間の私道というか通用道のようなところを半信半疑で入っていくと、確かにそれがそのまま裏手の住宅街の狭い路地になっているのだった。
だがレバー・フライのお店は見当たらなかった。しばらくうろうろとその辺りを歩き回る。どうしても見つからないので結局あきらめた。しかしそのおかげで、近代的なマンションと戦前からの街並みが隣接する佃島ならではの風情を満喫することはできた。

<有楽町のB級グルメ その2>

有楽町線で有楽町駅に戻る。時間は午後4時。そろそろ小腹が空いてきたので久しぶりに「ジャポネ」に行ってみることにする。
「ジャポネ」は、B級グルメ界の超有名店。首都高下の銀座インズ3にあるスパゲティーのお店だ。カウンター15席の小さなお店だが、お昼前後には長蛇の列ができる。私はこれまでに何回かここで食べたことがある。
最近の本格パスタとはまったく別物の、茹で置きの麺をフライパンで炒めるという昔ながらの日本式スパゲティーだ。炒めた香ばしさと麺の量の多さと、そして懐かしさが売り。当然並んでいるのは男性サラリーマンとB級グルメ・マニアばかりで、女性客はほとんどいない。
今日は時間が時間なのでさすがに行列は無し。すぐに席につき「ジャリコ」のレギュラー(550円)を注文した。「ジャリコ」はこのお店の一番人気メニューで、具材に肉、エビ、小松菜などが入ったしょうゆ味のもの。「レギュラー」は普通盛りのことで、これでもそれないの量はある。この上に、「ジャンボ」、「横綱」、「理事長」と盛りのランクが控えていて、「横綱」あたりから大変なことになってくる。
カウンターの中はかなり狭いにもかかわらず数人のスタッフがいて、この内2人は大きなフライパンを返しながら次から次へと麺を炒め続ける。コンロの火はつけっぱなし。麺も具材も手づかみで投入。細かいことはやってらんないよという感じ。
しばらく待って「ジャリコ」登場。まあB級グルメだからやっぱりびっくりするほどのものではなく、大雑把な味ながら、そこそこ美味しいといった程度。
「ジャンボ」以上の大盛を食べている人が大半の中で、ささっと完食して店を出る。油が口に残る。でもお腹和満足。
さすがにくたびれた足を引きずって有楽町駅に戻る。これで今日の散歩は終了。疲れた。

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