2013年6月19日水曜日

お赤飯日記

■■ ○月△日 お赤飯が食べたいと思う

お赤飯が食べたいと思った。

もともと私はお赤飯が大好物。
しかしそのことを人前で言ってはいけない、と、うちの奥さんからは釘を刺されている。いい大人が、お赤飯が大好きなんて言うとヘンに思われるというのだ。そうなのかな。
私の両親はお赤飯が大好きだ。私の叔父もお赤飯が大好きだった。だから私のお赤飯好きは血筋というわけだ。

しかし、お赤飯というのはかなり手間がかかるものだ。
 ときどきうちの母がお赤飯を作る。まずもち米と小豆は一晩水につけておかなければならない。それから、小豆は茹で、もち米は蒸し器で蒸し上げる。つまり足掛け二日間かかる上に、段取りもかなりの手間というわけだ。炊飯器に入れてボタンをポンというわけにはいかない。

それでもお赤飯が食べたいと思ったのだ。食べたいと思ったときに気軽に作れたらどんなにいいだろう。


■■ ○月□日 炊飯器で炊いてみたが失敗

ネットでいろいろ調べてみたところ、やはり蒸して作るのがいちばん美味しいらしい。しかしこれだともち米を一晩浸水する必要がある。
何とかもうちょっと手軽に出来ないものか。そういえば、うちの炊飯器には「おこわモード」というのがあったはずだ。とりあえずこれでやってみることにした。

もち米とささげ豆を買ってくる。
まずささげ豆を煮る。だいたい10分くらいで硬めに茹で上がった。煮汁には豆の色が出ている。
この煮汁を冷まして、洗っておいたもち米を浸して色づけする。だいたい1時間。
その後もち米と煮汁を炊飯器に入れて、釜の内側のおこわ用の目盛りよりも、やや少なめに水加減する。
そして「おこわモード」でスイッチ・オン。楽しみに炊き上がりを待つ。
約一時間で完成。色は実にいい感じだ。豆の硬さもちょうどいい。しかし、ご飯が全然ダメだった。柔らか過ぎてべちゃっとしている。これでは失敗だ。消化にはよさそうなんだけどねえ。

今日のウンチク ささげ豆の話

本格的なお赤飯は、小豆ではなくささげ豆を使うのだそうだ。
ささげ豆は小豆より粒が小さくて皮が厚い。煮たときに小豆は皮が裂けやすいが、ささげ豆は破れない。皮が裂ける小豆は、切腹に通じるとかで、江戸では武士に嫌われ、ささげ豆が使われるようになったという。
ささげ豆のいいところは、前夜からの浸水がいらないことだ。すぐに煮ることができるし、しかもかなり短時間で煮える。
なお、ささげ豆の量は、もち米の1割が適量とのことだ。


■■ △月○日 再び炊飯器で炊いたがまた失敗する

前回の失敗の原因は、炊く前にもち米を豆の煮汁につけて吸水&色づけしたせいかもしれない。そこで、今日は事前の吸水はなし。研いだもち米をそのまま炊飯器に入れ、豆の煮汁で炊くことにする。水加減はお釜の内側のおこわ用の目盛りどおりにする。
そしてスイッチ・オン。はたして今日の出来は?
結果は…、またしても失敗。きのうよりはいくらかマシだが、やっぱりべちゃっとしている。
もうこの炊飯器の「おこわモード」は信じないことにする。
やはり炊飯器ではダメなのか。

今日のウンチク もち米の水加減

ネットでもち米について調べていると、もち米を炊くときの水加減は、普通のお米のときより少なめにすると必ず書いてある。しかしどのくらい少なめにするのかは、けっこうまちまち。
理論的には、重量比でもち米の0.81.0くらいの水がちょうどいいらしい。もち米1合は150gだから、もち米1合を炊くために必要な水は、何と120~150ccということになる。
なぜ「何と」なのかというと、水が少な過ぎてもち米が、完全に水に浸らないのだ。米粒が水面より上に出てしまう。これでは炊けない。かといってこれ以上の水を入れると、べちゃっとなってしまうわけだし…。だからもち米は、蒸すものなのだ。なるほどねえ。

炊飯器の「おこわモード」の場合、釜の内側のおこわの目盛りにあわせて水加減する。このとおりに水を入れると、もち米1合のとき、水は170~180ccだった。理論上は120~150ccでいいのだから、これでは当然多過ぎる。なるほどべちゃっとなるはずだ。


■■ △月□日 もち米にお米をミックスして大成功

理論的にはもち米を炊飯器で炊くことは出来ない。しかし、これが可能になる魔法があった。それは、もち米にお米(うるち米)をミックスするのだ。最後の望みをこれに賭けてみた。そのレシピは次のとおり。

【炊飯器で炊くお赤飯のレシピ】

1 ささげ豆を煮る
・ささげ豆23gを水300ccで煮る。時間は約8~9分。
・煮上がったら冷まして豆と煮汁を分ける。

2 もち米とお米を混ぜて研ぐ
・もち米1合とお米0.5合。
・水や煮汁による吸水(色づけ)はしない。

3 炊飯器で炊く
・水加減は煮汁に水を足して20CCにする。
・米の上にささげ豆を乗せる(米と混ぜない)。
・「普通モード」で炊く。

このようにやってみたら、予想以上に美味しくできた。さっぱりとして、もちもち感もある。

炊飯器で炊けないはずのもち米が、お米を混ぜると炊けるのはなぜか。
お米を炊く時に必要な水の量は、もち米よりかなり多め。もち米の本来の水加減では米粒が水面より上に出てしまう。しかしこれに混ぜたお米の分のための水が加わると、全体が水の中に入るのだ。しかもその多くなった水は、炊き上がる過程でお米がちゃんと使うから、もち米がべちゃっとなることはない。多めに入れた水をお米が吸い取ってくれるイメージだ。

今回の水加減の根拠は次のとおり。
・もち米1合は150g 必要な水は 150g×0.8=120cc
・お米0.5合は75g 必要な水は 75g×1.3=約100cc
・したがって全体の水は 120+100=220cc

ネット上では炊飯器で作るお赤飯(とか炊き込みおこわ)のレシピがたくさん紹介されている。これらをよく見ると、もち米だけではなく、もち米とお米を混ぜているのが大半だ。
 私はてっきりお米を加える理由を、もち米は値段が高いので、お米で高(かさ)を増やすため、あるいはもち米のもちもち感をセーブするためなのかと思っていた。ところがそうじゃなかったのだ。でも誰もそんなこと書いてなかったな。


■■ □月○日 もち米をセイロで蒸すが失敗する

前回の成功で勢いづき、今度は本格的に蒸してお赤飯を作ろうと思い立った。中華セイロがあるのでこれを使うことにし、蒸し布を買ってくる。
炊飯器のときと同様、まずささげ豆を煮る。
もち米の色づけのため豆の煮汁と研いだもち米を鍋に入れて加熱した。もち米が煮汁を吸って色がつく。
セイロに蒸し布を敷き、そこへ色付けしたもち米を入れて、蒸す。目安は30分から40分くらいとのこと。
しかし、15分経ったところで、様子を見たらお米がもう柔らかくなっている。あわててボールにあけたら、べちゃっとしたお赤飯になっていた。これじゃあ炊飯器で炊いたのと同じだ。わざわざ蒸した意味がない。と、がっかりする。

あきらかに蒸す前に、鍋で煮たのが失敗の原因だ。これはネットのオール・アバウトにあったレシピ。
蒸す方法の場合は、もち米に色をつけるために、事前に豆の煮汁に長い時間浸しておくのが普通だ。しかし、この煮汁と一緒に鍋で煮る方法なら、短時間で手軽だと思ったのだ。しかしやっぱりダメだった。オール・アバウトさん責任とってくれー。

今日のウンチク もち米の吸水時間

一般的にもち米を蒸す場合は、その前に一晩水に浸けておくとされている。
理論的には、30パーセントの吸水で、もち米は炊けるという。2時間浸けておけば、40パーセントは吸水するというから、これで十分炊くことは可能なわけだ。
というわけで、次回はもち米の吸水&色づけを、2時間にしてみることにする。


■■ □月△日 セイロで蒸したお赤飯、今度は大成功

セイロに再度挑戦。今度は、研いだもち米を2時間ほど豆の煮汁に浸けて色づけ&吸水させた。その上でセイロで蒸したら大成功。そのレシピは、以下のとおり。

【蒸して作るお赤飯のレシピ】

1 ささげ豆を煮る
・ささげ豆23gを水300ccで煮る。時間は約8~9分。
・煮上がったら冷ます。

2 もち米を煮汁に浸す
・もち米1.5合を研いで、冷ましたささげ豆の煮汁に浸す(吸水と色づけのため)。煮汁にささげ豆が入ったままでよい。
・時間は約2時間。
・時間になったら、ささげ豆の混じったもち米と煮汁を分離する。煮汁はとっておく。

3 セイロで蒸す
・セイロの上に蒸し布を広げ、もち米とささげ豆を入れる。
・入れたもち米の上をふさぐように蒸し布をたたむ。
・セイロの蓋をして、蒸気の上がっている鍋にのせて蒸す。
・強火のままで、時間は30分。
・途中10分おきに、ささげ豆の煮汁を蒸し布の上からまわしかける(うち水)。1回にかける煮汁の量は50~100cc
・途中20分経ったところで、もち米を蒸し布に包んだまま、上下をひっくり返す。

こうして出来上がったお赤飯の出来ばえはどうか。
ご飯の色はちょうどいい感じだ。食べてみると、私好みの硬めの炊き上がり。さっくりしていて、しかももちもち。このさっくりというのが大事で、炊飯器では絶対に出せない。 
豆は硬めで、ご飯の食感とのバランスもよし。この豆の風味と、ほんのりとしたご飯の甘さもベスト・マッチだ。

この蒸して作る方法というのは、なかなかおおらかなところがよい。材料の分量とか水加減とか、調理時間もかなりアバウト。しかも蒸すときは、様子を見ながら蒸すので、微妙な好みに合わせて仕上げることができる。出来上がりを楽しみにしながらゆったりした気持でキッチンに立てるところがいい。

お昼ご飯にする。インスタントの赤だし味噌汁と、今日のおかずは、キュウリの浅漬けに油あげの煮たの。油あげの煮たのは、私にとってお赤飯の最高のパートナーなのだ。それで、わざわざ作っておいたのである。そして忘れてならないごま塩の大瓶。
質素に見えるかもしれないが、私にとっては最高の御馳走メニューだ。
一口ごとにしみじみと美味しいなあと味わいながら食べた。
昔はもち米は貴重品で、慶事や祭りなど晴れの日にしか口にすることができないご馳走だったという。それを、こんな何でもない日の何でもないお昼に食べられるとは、何てありがたいことだろう。幸せな昼食だった。

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