2012年11月30日金曜日

公園日記 「水戸市七ッ洞公園」

11月も終わりに近いある日、水戸市の七ツ洞公園に散歩に出かけた。
七ツ洞公園は、かなりユニークというかヘンテコな公園だ。園内に何ともおかしな珍風景、オモシロ景観が展開されている。
この公園はイギリスの設計事務所によって設計されたイギリス式の庭園とのこと。だから谷の上下の端にある建物(パヴィリオンというらしい)をはじめ、園内のあちこちには、西洋風の構築物が設置してある。谷の隣には「秘密の花苑(はなぞの)」という花壇なんてのもある。
日本のごく普通の田舎の風景の中に、いきなり昔の西洋風の建物が場違いにあるところが何とも突飛でヘンテコなのだ。

七ツ洞公園は,水戸市の北西部、那珂市に接するあたりにある。このあたりは那珂川の両岸に広がる平地を見下ろすように那珂台地のへりが川と平行して続いている。この台地に深く切れ込んだ谷のような地形を生かして作られているのがこの公園だ。
このあたりには横穴式の古墳が七つあったとのことで、それが「七ツ洞」の地名の由来とか。このうち四つの横穴が現在は池に水没しているそうで、水が少なくなると見えるらしい。
広さは約8ヘクタール。細長い谷には、湧き水をダムでせき止めて大小五つの池が並んでいる。この池を囲むようにして両側に森がある。水と緑が豊かな公園だ。

けっして山奥ではないが、公共交通機関によるアクセスはかなり不便。最寄りのバス停からは20~30分は歩かなくてはならない。そういう意味ではかなりへんぴな場所と言える。そんなところに、さっき紹介したようにいきなり場違いの西洋風の庭園が現れるのだから面白い。
今年はこの公園にまつわる大きな話題があった。今年の4月に公開された映画『テルマエ・ロマエ』という映画のロケ地として使われたのだ。
私は見ていないが、この映画は古代ローマのお風呂の設計者が古代ローマと現代日本との間をタイプ・スリップして往復するという話とのこと。その古代ローマのシーンのいくつかが、この公園でロケされたのだ。イギリス式のはずだが、古代ローマのシーンとして使えたわけだ。

この日もいつものように台地の側から公園に入っていった。
例によって人影はほとんど見えない。『テルマエ・ロマエ』の効果で、最近は来園者が増えていると聴いたが、あまりそんな実感はない。まあ今日は平日だしね。
この公園は池の周りを周回するようには出来ていない。南北に並んでいる池の東側のほとりに沿ってずっと木道が続いている。そこを歩いていきながら、それぞれのダムのところで対岸に渡り、また引き返すのが私なりの歩き方だ。渡ったその先に、何がしかのオブジェが建っている。

ダムは谷の上流から順に、「ダムA」、「ダムB」…「ダムD」と名前がつけられている。いかにもお役所式の工夫のないネーミングだねえ。
「ダムA」は、自然の岩が崩れて流れをせき止めたような雰囲気(実際にせき止めているわけではない)になっている。次の「ダムB」は水の中の島に両岸から木の橋を掛けたもの。だから、これも本当はダムではない。
「ダムC」は土の堤。「ダムD」は土手だけど一応、石造りの橋のような様子になっている。つまり上流から下ってくるに連れて、ダムの造りが、太古から近代へと時代を下ってくるようになっている。なかなか凝った趣向だ。それに連れて、池も大きくなってくる。

木道を歩いていって「ダムA」を飛び石のように渡る。その先には、森の中にちょっと奥まって石の門のようなものがある(「フォーリー」と言うらしい)。ところどころ門の石が崩れている。去年の地震で崩れたのか、廃墟を演出するためにもともとそんな風に作ってあるのかは私には判別がつかない。
また木道に戻って下っていく。落ち葉が木道の上にたくさん散っている。次に「ダムB」を渡る。中の島には東屋がある。床にタイルで模様が作ってあり、これが西洋風ということなんだろうな。
またまた木道に戻る。森が池にせまり、木々の下に木道が続いている。自然を満喫だ。池もだんだん大きくなってくる。
「ダムC」に出ると視界が開ける。上流の側にも下流の側にも水面が開け木々の緑が移り込んでいる。左右には森が迫っている。
樹木で囲まれた閉じた空間の底に水があり、その上には空の青だけ。この静かで閉じている感じがとてもいい。まるで、別世界。この公園の中でここが私の一番気に入っている場所だ。穏やかで静かな時間が過ぎていく。

またまた木道に戻る。今度は石の橋の「ダムD」を渡る、今度は引き返さずに向こう岸の東屋のわきから通じている山道に入る。池のほとりの細い道を辿りながら谷の一番下の「ダムE」まで歩いていった。
いつ見てもここにある丸屋根のパビリオンの姿は唐突感があるなあ。そこから少し西側の坂を上がっていくと「秘密の花苑」だ。
 上から見ると円形で十字に通路がある完全に幾何学的な形の西洋式花壇だ。こんな田舎の一画にあるのが何とも「秘密」っぽい、とは言えるだろう。今の季節は花がちょっと寂しい。

ここをささっと抜けて突き当たりの左の出口を抜けると、道は林の中の細道に続いている。ちょっと寂しい気分になる。こんなディープな道を歩く人なんているんだろうか。たぶん月に一人いるかいないかくらいじゃないのかな。
林を抜けると子供の広場がある。遊具が少し置いてある小さな広場だ。この広場と駐車場の間が野原になっている。本当に何もない原っぱで、端の方にちらほらベンチがあるだけ。意図してのことなのかはわからないが、この「何にもない」感がなかなかよい。
誰もいないこの野原を雑草と落ち葉をがさがさと踏みながらぐるっと一周する。

ここからまた池の方に降りていき、森の中の展望台からまた木道に戻った。今度は、上流の方へ戻っていく。
もう一度「ダムA」を渡って向こう岸に渡る。そして、池の向こう側の山道のような道に入る。湧き水で湿った地面に板をおいただけのなかなかワイルドな道だ。板はところどころ腐食してボロボロになっていてあぶなっかしい。
やがて出発した台地の上に帰ってきた。一時間弱のミニ散歩だった。そのヘンテコさも含めて自然が豊かでとてもよい公園だと思う。

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