2012年11月15日木曜日

実食「一汁無菜」 辛子明太子でご飯

久しぶりの「一汁無菜」実食シリーズだ。今年(2012年)の6月に3回ほど「実食「一汁無菜」~でご飯」と題してブログを書いた。あれっきりになっていて、すっかり間があいてしまっていた。その間、いろいろ「無菜」食を試してきてはいたのだが、ブログにアップするまでにはいたらなかった。

久しぶりの再開なので、今回はちょっとぜいたくをしてみた。辛子明太子である。「ぜいたく」というほどでもないかな。
私は辛子明太子が大好物だ。だが大好きなわりには食べる機会はあんまりない。一年に何回食べているんだろう。この前食べたのがいつだったか思い出せない。
「日本の食卓に欠かせない一品」などと言われるが、よそのお宅の食卓には、そんなにひんぱんに登場しているのだろうか。

辛子明太子は、「すけとうだら」という魚の卵を加工したものだ。すけとうだらの卵を塩漬けにしたものがたらこで、このたらこをさらに唐辛子を主にした調味液に入れて二次漬けすると辛子明太子になる。
ちなみに本場の博多では、「明太子」とは「たらこ」のことで、これを辛子に漬けたから「辛子明太子」というのだそうだ。だから「明太子」と「辛子明太子」はあくまで別物で、ちゃんと区別して呼んでいるとか。以下ここでは、本場に敬意を表してちょっとわずらわしいが、いちいち「辛子明太子」と書くことにする。
さてこの食べ物のルーツは朝鮮半島らしく、だから最初に伝わった福岡が本場になったらしい。日本で一般に食べられるようになったのは明治時代以降のことで、江戸時代にはなかったものとのこと。

日本人は辛子明太子が好きだ。たとえば2011年5月実施の「好きなごはんのお供ランキング」(gooランキング)の堂々の第1位は、ほかでもないこの辛子明太子だった。
ちなみに、このランキングでは、第2位が納豆、第3位が卵、第4位が漬物で、以下5位、肉そぼろ、6位、ふりかけ、7位、その他、8位、梅干し、9位、なめ茸、10位、食べるラー油、と続いている。どれもこうして書いているだけで美味しそうだ。

今回実食するために買ってきたのは、本場のメーカー品などではなくて近所のスーパーで普通に売っていたものだ。
魚売り場のとなりのふだんなら通り過ぎてしまうコーナーに並んでいた。思ったよりも広いスペースをとって辛子明太子のコーナーがある。みんなそんなに食べていたんだなあ、とあらためて感心する。
パック入りの辛子明太子を手にとって値段を確認すると、やっぱりけっこういいお値段だ。ちょっとひるんでしまう。
その隣を見ると、形はくずれているが量の多いパックが並んでいた。手にとると分量は倍くらいだが、値段はだいたい同じだ。つまり「完形品」の半分の値段。で、当然こちらを買う。
これは「切れ子」と呼ばれているもので、製造の過程でたらこが傷ついたり、端が切れてしまったものだ。まあ味は同じなんだろう、たぶん。

さて久しぶりなのでこの試みの趣旨とルールを確認しておく。
〔趣旨〕  ご飯と味噌汁と、いわゆる「ご飯のお供」一品のみで食事をする。「ご飯のお供」は、ささやかなのでおかずとしては「一汁一菜」の「一菜」にはあたらない。それで、名付けて「一汁無菜」というわけだ。
このような究極のシンプル・メニューをたらふく食べ、その美味しさをとことん味わい尽くす。そうすることによって、お腹だけでなく心までも満足させたいのだ。

〔ルール〕 
① 食べるのは、ご飯と味噌汁と「ご飯のお供」を一品。それ以外のおかずはなし。
② 「ご飯のお供」は一回に一種類のみ。二種類以上を取り合わせたりしない(お互いの味が邪魔をしあってしまうので)。
③ ご飯は1.5合(私がおいしく食べられるちょうどよい量)。
④ 味噌汁は一杯のみで、おかわりはなし。

今回のメニュー紹介。
お米は米作りをしている親戚からいただいた今年の新米。銘柄はたぶんコシヒカリだと思う。
味噌汁は、味噌が「無添加・円熟こうじみそ」という名前のもの。長野県下諏訪町のひかり味噌製。いわゆる信州味噌で米味噌。ネーミングはたいそうだが、特別なものではなくて近所のスーパーで安売りしていた。けっこう美味しくて気に入っている。
今日の味噌汁の具材は長ネギと油揚げ。
辛子明太子は先ほど書いたように近所のスーパーで売っていたもの。商品名は「辛子めんたい子」。111グラム入りで330円だ。原産国がロシアとアメリカ。「製造者」という表示はなくて「加工者」がそのスーパーの名前になっている。でもこのスーパーで漬け込んだはずはないだろうけど…。この表示の仕方は、よくわからない。

食べる前にやはりちょっと気になるのは、辛子明太子の塩分だ。
冷蔵庫の普及しない昔は、保存の目的でかなり塩分が多かったという。1980年代には塩分の割合が、約10~12%だったらしいが、低塩化が進んで現在の平均値は約4~6%程度という。一般的な一食分の辛子明太子の量は50グラムとのことなので、その場合の塩分は2~3グラムということになる。
味噌汁一杯分の塩分が約1グラムだから明太子と合わせると3~4グラム。一日の塩分摂取量の基準は、男性だと10グラム未満とされている。一食分はその三分の一だから、だいたい許容範囲ということだ。

ちなみに塩分について調べていたら、辛子明太子が栄養豊富だということもわかった。主な成分は、水分、タンパク質、脂質だが、ビタミンB12、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンB1などのビタミン群が多く含まれていて、貧血や動脈硬化、老化、冷え性、風邪などの予防によいといわれ、さらに夏バテや眼精疲労などにも効果があるともいわれているという。
何とも素晴らしい食品ではないか。個人的には何となく「嗜好性」の強い食べ物という印象があったので、ちょっと驚いた。

それではいよいよ実食だ。
 辛子明太子は、塩分の計算のとき一食分50グラムが一般的と書いてあったが、とりあえず小さなお皿に30グラムほど取り分けてみる。
ご飯と味噌汁を器に盛りつける。ご飯は、いつものように1.5合を四杯で食べる予定。テーブルの上に、ご飯の茶碗と汁椀と、白い小皿にのった辛子明太子の赤。なかなか美味しそうな景色だ。
それでは味噌汁から。熱いので一口、二口、三口と少しずつすする。ちょっとしょっぱかったかな。この味噌はまだ買ったばかりなので塩梅がうまくいかないのだ。
ご飯を一口、二口。口の中に残るみそ汁の味で、もりもり食べられる。やはり新米はおいしい。またみそ汁をすすり、ご飯を三口、四口。あれ、味噌汁の味で、お茶碗の半分ほども食べてしまっていた。このままいくらでも食べられそうだ。そのうち味噌汁だけの食事にもチャレンジしてみようかな。

しかし今回の趣旨は辛子明太子。辛子明太子を、ほんの少し箸でつまんでご飯の上にのせる。そしてご飯と一緒に口へ運んだ。けっこうな塩気があって、唾液が出てきてご飯がどんどんなくなっていく。
ご飯はすぐに二杯目へ。できるだけ少しの量の辛子明太子を箸でつまむ。しかし、辛子明太子というのは例の袋状の薄い皮がなかなか厄介だ。意外と丈夫で箸ではうまく切れない。しかも中身の粒々は、この皮にわりとしっかりくっついている。
それでも何とか辛子明太子をご飯の上になすりつけるようにのせては、次々と口に運ぶ。
辛子明太子の魚卵独特のねっとり感と新米のご飯のねっとり感とが一体となる。すいすいご飯がすすんでいく。あっというまに二杯目も完食。

しかし、ご飯はすすむのだが、何だか物足りない。辛子明太子を食べている満足感が薄い。塩分とねっとり感があるので少量でもご飯が食べられてしまうわけだが、辛子明太子の本来の風味が薄まっている感じ。たしかにお腹はふくれつつあるのだが、これでは満足できない。
そこで、なるべく少しずつのせるという方針を転換する。小皿の辛子明太子は、三分の二ほど減っている。最初30グラムだったから20グラムほど食べた事になる。
ここにさらに30グラムほど追加をする。そして、ご飯三杯目からはもうちょっと盛大にご飯にのせることにする。
こうすると口の中一杯に辛子明太子の風味が広がる。当然それなりにしょっぱい。そんなにしょっぱくなくてもご飯は食べられるのだが、主役は辛子明太子と割り切ることにする。
ただし辛子明太子だけだと、今度はしょっぱ過ぎてしまって、本来の美味しさがかえってわからないだろう。ご飯と一緒になることでほどよく味が薄められ、美味しさが引き出されるのだ。
 というわけで、めでたくご飯四杯を完食した。

結局辛子明太子は合計60グラムを食べた事になる。今回は塩分には目をつぶろう。
以前、塩辛を食べたときには、30グラムで足りた。塩分の割合はどちらも約5%。塩辛の場合は、噛んでもイカが口の中に長く残り、旨味を放出し続けた。しかし、辛子明太子の場合はそれがなく、ご飯と一体になってどんどん胃に消えていくので塩辛よりも量が必要だったのだろう。もっとも、もっと高価な本場ものの辛子明太子なら旨さも違うだろうから、もうちょっと少量でも満足できるのかもしれない。
いずれにせよ「おかず力」というのは塩気だけの問題ではないということをあらためて知った。
でもとにかく今回も一応満足。

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