2012年8月21日火曜日

大予想 ボブ・ディラン・ベスト・ソングズ10

<今号のレコ・コレ誌は読むところなし>

「レコード・コレクターズ」誌の今月号(2012年9月号)は、私的には全然読むところがなかった。
特集はA&Mレーベル。A&Mと言えばカーペンターズとかのポップス・レーベルでしょ。ロックじゃないので私には興味なし。
200枚のアルバムのうち気になったのは、ハンブル・パイとポリスとスティングくらい。ポリスだって、こんなレーベルにいなければ、もっと別の展開があったのでは。
もう一つの特集がミレニウム。こんなものロックじゃない。70年代に切実な思いでロックを聴いていたロック少年には、ミレニウムもビーチ・ボーイズも、そしてついでにエルヴィス・プレスリーも全然ロックなんかじゃなかった。で、やっぱり興味なし。

 というわけで、残念ながら読むところのなかった今月号。ただ唯一私の注意を引き付けたのが、次号の予告だった。
次号の特集はストーンズに続いて、ボブ・ディランのベスト・ソングズ100。よし、それなら私も再びベスト10予想にチャレンジしてみよう。でも、ディランはちょっと手強そうだな。
というようなわけで、以下はそのお話。ゴタクはいいからベスト10の結論だけ知りたいというせっかちな人は、文末の方だけご覧ください。

<予想の大枠を決める>

予想するのはストーンズのときと同じく上位のベスト10曲。
この予想の前提としてまず間違いなく言えることが一つある。それは、1970年代の後半以降の曲はベスト10には入らないだろうということだ。
いくら50年のキャリアを誇るとはいえ、ディランの絶頂期は70年代の半ばまでである。彼の代表曲はほぼすべて62年のデヴューから、この時期までの間に生み出されたと言ってよい。この事情はストーンズとまったく同じ。
具体的には1978年の『ストリート・リーガル』(Street Legal)以降の曲は絶対入らないはずだ。このアルバムの一つ前のスタジオ作は、ライヴの『激しい雨』(Hard Rainをはさんで、『欲望』(Desire、)ということになる。『欲望』の発表が1976年だから、デヴュー以後、キャリアの最初の14年間で、ディランの代表作のほとんどは作られたことになる。

<ディランの主要アルバムはこれだ>

さてそれでは、この14年間に作られた曲の中からどのようにベスト・ソングズを選ぶか。その方法として思いついたのは、この間のディランの主要アルバムを順に一枚ずつ検討しながら、代表曲と思われるものをピックアップするというやり方だ。

その主要アルバムとは何か。この14年間に出したアルバムから、まず2枚のライヴ・アルバム(『偉大なる復活』と『激しい雨』)を除き、2枚のベスト・アルバム(『グレーテスト・ヒット』と『同 第2集』)を除き、サントラ盤1枚(『ビリー・ザ・キッド』)を除く。
さらに2枚のボンクラ・アルバム(『セルフ・ポートレイト』と『ディラン』)と、ついでに『地下室』も除いてしまう。
さあこれで残ったのが、以下のとおり掛け値なしにディランの主要アルバムと言えるものだ。

『ボブ・ディラン』(Bob Dylan1962
『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』(The Freewheelin' Bob Dylan1963
『時代は変る』(The Times They Are a-Changin1964
『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』(Another Side of Bob Dylan1964
『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』(Bringing It All Back Home1965
『追憶のハイウェイ61』(Highway 61 Revisited1965
『ブロンド・オン・ブロンド』(Blonde on Blonde1966
『ジョン・ウェズリー・ハーディング』(John Wesley Harding1967
『ナッシュヴィル・スカイライン』(Nashville Skyline1969
『新しい夜明け』(New Morning1970
『プラネット・ウェイヴズ』(Planet Waves1974
『血の轍』(Blood on the Tracks1975
『欲望』(Desire1976

全部で13枚。そこで1枚につき、だいたい1曲弱平均で選んでいけば、ベスト・ソングズ10曲が自動的に選べるのではないかと踏んだわけだ。

<主要アルバムごとに代表曲を検討していく>

で、順に検討を始めた。だいたいこんな感じ。

*『ボブ・ディラン』
 記念すべきデヴュー・アルバム。検討を始めていきなりだけど、このアルバムには代表曲はなし。何しろほとんど他人の曲ばかりだからね。 
でも、このアルバム、演奏スタイルはフォークだけど、次作以降のアルバムとは全然違ってロック魂にあふれている。名曲ではないが名演奏。個人的には好きなアルバムだ。

*『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』
当然文句なしで次の2曲がベスト10に入るはず。

・「風に吹かれて(Blowin' in the Wind)」
・「はげしい雨が降るA Hard Rain's a-Gonna Fall)」

*『時代は変る』
 このアルバムではやっぱり文句なしでこの曲。

・「時代は変るThe Times They Are a-Changin')」

*『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』
うーん。このアルバムからは代表曲なし。

*『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』
言わずと知れた名盤だけど、この中でディランのオールタイムのベスト・ソングということになると、次の2曲くらいだろうな。

・「サブタレニアン・ホームシック・ブルース(Subterranean Homesick Blues)」
・「ミスター・タンブリン・マンMr. Tambourine Man)」

「サブタレニアン…」は、歌詞を書いた紙をどんどん捨てていく例の映像が、当時のディランのイメージを集約していて、その意味でも代表曲と言えるだろう。
本当は「シー・ビロングズ・トゥ・ミー(She Belongs to Me)」や「ラヴ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット(Love Minus Zero/No Limit)」なんかも個人的に好きなんだけれど、ベスト10入りは無理だろうな。

*『追憶のハイウェイ61
 このアルバムも名盤だが、ディランのベスト10ソングということになると、この1曲だけかな。
タイトル・ソング「追憶のハイウェイ61」はどうしようかと迷ったが、ベスト10にはたぶん入らないだろう。

・「ライク・ア・ローリング・ストーン(Like a Rolling Stone)」

*『ブロンド・オン・ブロンド』(Blonde on Blonde1966
このアルバムはディランの代表作ということになっているけど、曲単位で見ていくとベスト10に入りそうなのは、とりあえずこの1曲くらいか。

・「メンフィス・ブルース・アゲイン(Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again)」

他には「雨の日の女(Rainy Day Women #12 & 35)」とか女の如くJust Like a Woman)」なんかもあるけど、どっちもヘンテコな曲だからなあ。とりあえずノミネート見送り。

*『ジョン・ウェズリー・ハーディング』
このアルバムの曲はみんな微妙だ。強いて挙げるならこの曲か(ジミ・ヘンのおかげ)。

・「見張塔からずっとAll Along the Watchtower)」

*『ナッシュヴィル・スカイライン』
このアルバムも前作同様どれも微妙。「レイ・レディ・レイ(Lay Lady Lay)」あたりは、その後もライヴでよくやっているけど、やっぱりヘンテコな曲なのでとりあえずパスすることに。

*『新しい夜明け』
異常に評価の低いアルバムだけど、たしかに曲単位で見ていくと、これはという曲がない。ジョージ・ハリソンがらみの「イフ・ナット・フォー・ユー(If Not for You)」あたりが、もしかすると入るのかなあ。
個人的には「新しい夜明け(New Morning)」が好きなんだけれども、とりあえずどちらもパス。

このアルバムの後に出た『グレーテスト・ヒット第2集』(Bob Dylan's Greatest Hits Vol. II1971)とサントラの『ビリー・ザ・キッド』(Pat Garrett & Billy the Kid1973)は、主要アルバムからはずしてしまったけれど、これらのアルバムにしか入っていない名曲があるのを思い出した。一応以下の3曲は、ベスト・ソング候補にやっぱり挙げておくべきだろう。

・「マスターピース(When I Paint My Masterpiece)」
・「アイ・シャル・ビー・リリーストI Shall Be Released)」
・「天国への扉Knockin' on Heaven's Door)」

本当は『グレーテスト・ヒット第2集』に入っているレオン・ラッセルとの「川の流れを見つめて(Watching the River Flow)」も大好きなのだけどね。

*『プラネット・ウェイヴズ』
これも異様に評価が低いアルバム。良いアルバムなのだが、たしかにベスト10クラスの曲はないかも。
強いて挙げるなら「いつまでも若く(Forever Young)」のスロー・バージョンあたりか。でもパスしよう。
個人的に好きなのは、ザ・バンドならではのグルーヴが生かされた「こんな夜に(On A Night Like This)」だ。

*『血の轍』
ディランの最高傑作。でも、ベスト10クラスの曲はあるかな。
挙げるとすれば、「ブルーにこんがらがってTangled Up in Blue)」と「愚かな風(Idiot Wind)」あたりだろうけど、ベスト10入りまでは無理のような気が…。

*『欲望』
これもなかなか味わい深いアルバムではある。アルバムとしての代表曲は、「コーヒーもう一杯(One More Cup of Coffee (Valley Below))」 と「オー,シスター(Oh, Sister)」あたりだろうが、ベスト10には入りそうもない。

あれあれ、ということは1970年代のスタジオアルバムからは、ベスト10曲は1曲もないということになってしまった。良いアルバムはあるのだが…。

<私の選んだベスト・ソングズ(発表年代順)>

以上の結果選んだ予想曲は次の11曲だ。

「風に吹かれて(Blowin' in the Wind)」
「はげしい雨が降るA Hard Rain's a-Gonna Fall
「時代は変るThe Times They Are a-Changin')」
「サブタレニアン・ホームシック・ブルース(Subterranean Homesick Blues)」
「ミスター・タンブリン・マンMr. Tambourine Man)」
    「ライク・ア・ローリング・ストーン(Like a Rolling Stone)」
「メンフィス・ブルース・アゲイン(Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again)」
「見張塔からずっとAll Along the Watchtower)」
「マスターピース(When I Paint My Masterpiece)」
「アイ・シャル・ビー・リリーストI Shall Be Released)」
「天国への扉Knockin' on Heaven's Door)」

<私の選んだボブ・ディラン・ベスト・ソングズ10>

さてこれに私なりに順位をつけた予想最終結果は以下の通りだ。

第1位 「ライク・ア・ローリング・ストーン(Like a Rolling Stone)」

*やっぱりディランのベスト・ソングと言えば何をおいてもこれでしょう。

第2位 「風に吹かれて(Blowin' in the Wind)」
第3位 「はげしい雨が降るA Hard Rain's a-Gonna Fall
第4位 「時代は変るThe Times They Are a-Changin')」

    *この辺には初期フォーク期の代表曲が並ぶのではないかと思う。やっぱり何と言ってもディランの曲としては印象が強いし、しかもその後、長い間歌い続けられてきたからだ。

第5位 「サブタレニアン・ホームシック・ブルース(Subterranean Homesick Blues)」
第6位 「ミスター・タンブリン・マンMr. Tambourine Man)」
第7位 「メンフィス・ブルース・アゲイン(Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again)」

    *次にこの辺にはフォーク・ロック期の曲が来るのではないか。
ただしこの時期の曲は曲単位での名曲というのが少ないので、票が分散して順位がもっと下がるかもしれない。
でもこの3曲は、この時期のシュールでしかもパワフルなディランの歌の世界を示す代表曲だと思う。

第8位 「アイ・シャル・ビー・リリーストI Shall Be Released)」
第9位 「マスターピース(When I Paint My Masterpiece)」
第10位 「天国への扉Knockin' on Heaven's Door)」
次 点 「見張塔からずっとAll Along the Watchtower)」

    *この辺はディランの文句なしの名曲群だ。どれも、他のアーティストのカヴァー・ヴァージョンが頭に浮かんでくる。

さて以上が私の予想だ。果たして当たっているのかどうか。
レコ・コレ誌の次号発売を楽しみに待つことにしよう。

9/10 追記>
1曲忘れていた。「くよくよするなよ(Don't Think Twice, It's All Right)」だ。『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』に入っている曲だが、『偉大なる復活』でのライヴ・バージョンも印象的だった。
もしかすると10位以内に入ってくるかもしれない。

<関連記事>
 はたしてこの予想がどのくらい当たっているのか。その結果については、下記の記事で発表。

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