2012年3月26日月曜日

展覧会「抽象と形態」(川村記念美術館)を観る

久しぶりに美術館に行って展覧会を観てきた。
観たのは千葉県佐倉市の川村記念美術館で開かれている「抽象と形態」展。作家によるギャラリー・トークがあるという3月25日に行ってみた。

川村記念美術館は、佐倉市の郊外に位置している。辺鄙な片田舎の細い道を行くと、忽然と姿を現すというロケーションにまずびっくり。
この美術館は豊かな自然に囲まれた環境も素晴らしく、建物も立派。「美術館に出かけてみよう」というときに抱く期待感を、建物に入る前にもう十分に満足させてくれる。
私は今回が2回目の訪問。

開かれている展覧会は「抽象と形態:何処までも顕れないもの」。このタイトル、いろいろ企画者の思いがこもっているのだろうけど、あまりにも大まか過ぎて、何も言っていないのと同じなのでは。それにキャッチーでもないしね。
内容は7人の現代作家の作品展。この7人の作家の作品とあわせて、モネ、ピカソ、ブラック、ヴォルス、モランディ、サム・フランシスなどなど、「20世紀美術に多大な影響を与えた芸術家」の作品を展示し、両者を対比させて共通するものを示すというのが「ミソ」というか見所らしい。
しかしモネ、ピカソらのそれぞれの作品がいずれも1,2点で、それも小品(所蔵品からという制約もあったのだろうが)では「対比」がちょっと中途半端。いっそ、そんな小細工はやめて7人の現代作家の展覧会としたほうが、よっぽどすっきりしたのでは?よい作家がそろっているのだし……。

ギャラリー・トークの時間になると、たくさんの人が集まってきたのでちょっと驚く。
私は元来、アーティスト自身のトークにはそれほど期待していない。さらに言えば、作家の言葉を聞いて作品の理解の参考にしようとするのは基本的に間違っていると思っている。観客は作品と向き合うことによってしか作品を理解できないのだから。
だいたい作家が自分の作品を客観的な意味で理解しているとはかぎらないし、そもそも自分が描くということについて理路整然と説明できるものでもないだろう。
作家のトークというのは、作品理解とは切り離して、その作家の人となり、考え方について知る機会なのだと思う。
だから作家の皆さんには、自分の作品の「解説」(今回もけっこうあったけど)よりも、むしろ自分の技法と制作している場での思いを語ってほしい。

その点で作品もよかったけど野沢二郎氏の話は、具体的で面白かった。
スキージを使い肉体的、感覚的な作業の結果として画面が出来上がると話していたが、それでは「水面」のイメージというのは、どのようにそこに現れてくるのか、質問が許されるのなら尋ねてみたかった。
赤塚祐二氏の作品は、旧作(カナリア・シリーズ)3点の方が造形的なダイナミズムが圧倒的で私は好きだ。
彼の話では、描くにあたって「自分が面白いと感じることが大事」という言葉に作家としてのリアルな実感が感じられてよかった。
吉川民仁氏の展示は、最初、同じ人が描いたとは思えないくらい作風がまちまち。このセレクションでは作者は損をしていると思う。力がある人なのだから近作一本で勝負した方がすっきりしてよかったのでは?
トークはちょっと難しかった。

 今回の展覧会は、作家のセレクションもよく考えられていて、なかなかよい展覧会だと思った。
常設展示では、ルイス、ロスコ、ニューマン、ステラなどアメリカ現代美術のコレクションがやはり充実していて見ごたえがあった。

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