2012年3月10日土曜日

ビートルズのアルバム5選 その2

 ビートルズのアルバム5選の2回目。私の5選は次の通りで、このうち第1位と2位について前回コメントした。今回は、第3位から。

1 『アビイ・ロード』
2 『ザ・ビートルズ』(通称『ホワイト・アルバム)
3 『ゲット・バック』(未発表アルバム)
4 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
5 『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』 (通称『赤盤』)
〃 『ザ・ビートルズ1967年〜1970年』 (通称『青盤』)

第3位 『ゲット・バック』(未発表アルバム)

シンプルなスタジオ・ライヴによって原点に回帰しようというポールの意図で始まったビートルズの<ゲット・バック・セッション>は、結局だらだらとまとまりのないままに終わってしまう。
このときの音源からグリン・ジョンズがプロデュースしてまとめたのが、このアルバム『ゲット・バック』だ。アルバム・ジャケットは、原点回帰というコンセプトを反映して、ファースト・アルバムと同じ場所、同じ構図で撮られたメンバーの写真だった。これがその後、ベスト・アルバム『青盤』のジャケットに流用されたことは周知の通り。
 しかし『ゲット・バック』は事前の宣伝用のアセテート盤が出回ったにもかかわらず、メンバーのOKが出ないまま、お蔵入りして幻のアルバムとなる。が、このアルバムはブートレッグとして比較的容易に入手可能だ。私の持っているのは、ジャケットも再現され、ボーナス・トラックに<ルーフトップ・コンサート>の音源が収録されているもの。

その後この音源は、フィル・スペクターに預けられ、バック・コーラスやオーケストラが加えられるなど、ゴテゴテといじくりまわされて『レット・イット・ビー』となったのだった。
『レット・イット・ビー』をリアルタイムで聴いたビートルズ・ファンはみんな、私と同様その中途半端さにとまどったと思う。基本的にラフな作りなのに、装飾過多でもあり、どうにも煮え切らない感じだった。

その原型である『ゲット・バック』は、もっとずっとすっきりしている。収録されているナンバーはだいたい『レット・イット・ビー』と同じだが(テイクは違う)、ポールの当初の意図どおり、スタジオでのセッションの生な感じが生き生きと伝わってくる。彼らがそこにいて、音楽を楽しんでいるのがわかる。映画『レット・イット・ビー』で描かれているメンバーのギクシャクした関係は、このアルバムにはない。
「ラストダンスを私に」をイントロにして強引に始まる「ドント・レット・ミー・ダウン」とか、即興(たぶん)で延々と歌詞を繰り出す「ディグ・イット」(ロング・バージョン)など、わきあいあいとした仲間うちのノリが楽しい。

スタジオできっちりと練りあげたアルバムではない。だから本来のアルバムの系列に位置するアルバムというより、ファンにうれしい企画モノに近い。ちょうどストーンズでいえば『ジャミング・ウィズ・エドワード』、ディランでいえば『ベースメント・テープス』、キング・クリムゾンでいえば『アース・バウンド』、エマーソン・レイク&パーマーでいえば『展覧会の絵』みたいな。
 
 2003年の『レット・イット・ビー…ネイキッド』は、ポールの発案によるものとのことで、てっきり『ゲット・バック』の復活かと思ったら、そうではなかった。私はブートの『ゲット・バック』を後生大事にして生きていくとしよう。

第4位 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』

いわずと知れたロックの名盤。ロック名盤ベスト100のナンバー1の座の常連アルバムである。

しかし、昔々、私たちロック少年の間では、あんまり評判が良くなかった。なぜならロックの名盤と言われている割には、「ロック度」が低かったからである。
レッド・ツェッペリンやキング・クリムゾンなんかにどっぷりとはまっている少年(私)の耳には、何とも物足りない音だったのだ。ロックぽいギター・サウンドが聴けるのは、タイトル曲の「サージェント・ペパーズ……」だけ。次作アルバムに入っている「バッく・イン・ザUSSR」とか「バースデイ」みたいな曲をもっと聴きたかった。

しかし、これは要するに「ロックの精神を持ったポップス・アルバム」と考えれば良いのだと思う。それも極上の。
ロック史上初のコンセプト・アルバムとしても評価が高いが、私的にはそんなことより何より、このアルバムの全体として持っているまったりとした味わいが好きだ。
「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」とか「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」とか「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」などなど、(一筋縄ではいかない解釈の幅をはらみつつも)のどかでのんびりした世界が今は心地よい。
ラストの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」は、ジョンの曲の中でも一二を争う名曲(ポールのパートもあるけど)。生きていることの不安と、世界への批判がシュールに、そして感覚的に描かれていて少年の私を共感させた。

そして、ジャケットも含めビートルズの4人が、一体となって作った幸せな最後の一枚としても愛着を感じる。

第5位 『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』 (通称『赤盤』)
〃  『ザ・ビートルズ1967年〜1970年』 (通称『青盤』)

アルバム5選のうち、4枚を後期から選んだので、どうしても前期ビートルズのヒット・ソングの数々を聴くために、コンピレーション・アルバムを選んで最後の一枚にしたかった。
私の希望としては前期のヒット曲がひととおりそろっていて、なおかつアルバムには入っていない後期のシングル曲、「レディ・マドンナ」、「ヘイ・ジュード」、「ジョンとヨーコのバラード」、それに「ゲット・バック」と「レット・イット・ビー」のシングル・バージョンは入っていてほしい。

2000年に出た『1』がこの条件にかなり近い。しかし、英米でチャート1位になった曲を集めるというコンセプトだからしょうがないとはいえ、「プリーズ・プリーズ・ミー」も「オール・マイ・ラヴィング」も「キャント・バイ・ミー・ラヴ」も「アンド・アイ・ラヴ・ハー」も入っていないのではねえ……。
さらにさらに「ノルウェイの森」も「ミッシェル」も「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」も「フール・オン・ザ・ヒル」も入っていないとなると、ビートルズのベストとは言いがたい。ということで『1』はボツ。

それでは、それまで別売されていたCD2枚が、リマスターを機会にめでたく合体して2枚組の1アイテムになった(LPは最初から2枚組だったが)『パスト・マスターズ』はどうか。
後期のシングル曲、シングル・バージョンを聴くという条件にはぴったりなのだが、いかんせんこれはビートルズのアルバムを全部持っている人のための選曲。つまり前期のシングル曲でも、アルバムに入っているものは収録されていないのだった。
とくに痛いのは、変則の実質的ベスト盤『マジカル・ミステリー・ツアー』のB面に収録されているという理由で、シングル「ハロー・グッドバイ」、「ストロベリー・フィールズ・…」、「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」などなどが入っていないこと。

その他、コンピレーションとしては『オールディーズ』とか『ヘイ・ジュード』とかも、ものすごく愛着はあるのだけれど、ここでの私の条件は満たせない。しかしこの条件に、そもそも無理があったのかも……。ということで、結局、変則技、同率5位にして、この2枚のベスト・アルバム選ばせてもらった。
結論から見れば、当然の選択と思えるかもしれないが一応、以上のような煩悶の結果だったのである。

<次点というかおまけ>
やっぱり第5位までに、『リボルバー』を選ぶべきだったかなあ。それと『ラバー・ソウル』も。『ホワイト・アルバム』なんかより、アルバムとしてのできはいいし。『ゲット・バック』も未発表アルバムだしなあ……。というように、迷いは続くのでした。

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