2012年3月9日金曜日

ビートルズのアルバム5選 その1

アーティスト別の私的アルバム5選を、ローリング・ストーンズとエリック・クラプトンについてやってみた。
「5枚」という枠には別に「きりがいい」以上の意味はない。その意味のない条件を自分に課して、あーでもないこーでもないと考えをめぐらしてかってに悩むわけだ。これが楽しい。
その楽しさにすっかり味をしめてしまったので、今回は大ネタ中の大ネタ、ビートルズのアルバム5選。

前提として言っておくと、私はビートルズの後期が好きだ。
リアルタイムで聴き始めたのが『ホワイト・アルバム』からだったせいかもしれない。だからビートルズのアルバムはだいたい持っているけれども、初期のものを聴く機会は少ない。そういえば、『ライヴ・アット・ザ・BBC』は、そもそも持っていなかった(唯一持っていないアルバムか)。
というわけで私のアルバム5選は、後期のアルバム中心ということになる。ただし、初期のヒット・ソングや、後期のアルバム未収録のシングルが聴けるコンピレーションは入れたいと思う。
その結果とコメントは次の通り。

1 『アビイ・ロード』
2 『ザ・ビートルズ』(通称『ホワイト・アルバム)
3 『ゲット・バック』(未発表アルバム)
4 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
5 『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』 (通称『赤盤』)
〃 『ザ・ビートルズ1967年〜1970年』 (通称『青盤』)

第1位 『アビイ・ロード』

たぶん誰もが認める(認めざるを得ない)ビートルズの最高傑作だろう。
一曲目ジョン・レノンの「カム・トゥゲザー」のクールなビート感(リンゴのドラム・センスが光る)によって一気に聴くものは、『アビ・ロード』ワールドへと引きずり込まれる。これに続く名曲の数々による展開もじつに良くできている。
とくにB面の「ユー・ネバー・ギブ・ミー・ユア・マネー」から始まる有名なメドレーの素晴らしさ。私的には「ゴールデン・スランバー」~「キャリー・ザット・ウェイト」~「ジ・エンド」と続くメドレー後半部分は聴くたびに何ともいえない熱い気持ちになる。
とくに「キャリー・ザット・ウェイト」だ。メドレー冒頭の「ユー・ネバー・ギブ・ミー・……」のメロディーがリプライズしながら4人がユニゾンで歌う「キャリー・ザット・ウェイト」の次の部分には切なくなる。

Boy, you're gonna carry that weight
Carry that weight, a long time
(ボーイ、君はその重荷を背負っていくんだよ これから長い間ずっとね)

ボーイ(当時の私)は、この歌を聴きながら4人(ビートルズ)の「重荷」について、そして何より自分の「重荷」について不安を抱えつつ、励ましも受けながら思いをめぐらしたのだった。
あれから40年と少し経った。私は幸せなことにやっと「重荷」をおろせたのだったが、彼らの「重荷」はどうなったんだろう。作者のポール・マッカートニーは、1989年から翌年にかけて行われた『ゲット・バック・ツアー』で、はじめてこのメドレーを人前で歌ったのだったが……。

第2位 『ザ・ビートルズ』(通称『ホワイト・アルバム』)

現在では、ビートルズの名盤のひとつに数えられ、中には「最高傑作」とまで言う人もいるアルバム。しかし、発表当時の私の記憶では、賛否両論どころか、ほとんど「否」の評価しか聞かれなかった。「ビートルズの初めての失敗作」とまで公然と言われたりして。

前作の掛け値なしの名盤『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の次の作品、しかも彼らの設立したアップルからの初アルバム、さらに初めての2枚組ということで、世間の期待は否応なく高まった中での発売だった。ところが、完全に世間の人々は肩透かしをくらったわけだ。
そのような当時の期待感を抜きにしても、これはとりとめのないアルバムだ。曲調がばらばらで、いろいろな興味がとっちらかっていて、全体としてのまとまりがない。
ようするにこれはメンバー各自のソロ・ワークの寄せ集めである。だからもうバンドとしての一体感はあまり感じられない。しかも、それぞれの曲の出来が、均してみるとそんなによくない。というか、駄曲が多い印象。

とくに、ジョン・レノンの曲のいくつかはだらだらとしていて今ひとつ。たとえば「グラス・オニオン」、「アイム・ソー・タイアード」、「ハピネス・イズ・ア・ウォームガン」、「ジュリア」、「セクシー・セディ」などなど、みんな後の彼のソロ時代のアルバムに入っていそうな曲だ。現在ではけっこう高く評価されるようになったけど、私には今でもあまり魅力を感じない。
それにジョージの「ピッギーズ」とか「ロング・ロング・ロング」とか「サボイ・トラッフル」なんかも同様。
しかしその合間にはめ込まれた名曲達はすごい。「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」、「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」、「ブラックバード」、「バースディ」、「ヤー・ブルース」などなど。

しかし、結局私がこのアルバムを好きなのは、そのような名曲があるからだけではない。強いて言うなら、これまでぐだぐだ言い連ねてきたこのアルバムの欠点が、じつはそのまま好きな点でもあるということ。つまりこのアルバム全体のだらだらしてまとまりのない空気に魅力を感じているのだ。まさに「屈折した愛情」だね。
聴いているとメンバーそれぞれの顔が次々に現れては消えていく。メンバー各人の興味、関心、愛着、そして機知、オフザケ、新たな試みがそこここに散らばっている。アルバム全体に漂っている。この自由な空気感が好きなのだ。ジョンとヨーコの「レボリューション9」なんかも、そういう点で好きだし楽しめてしまう。

それから「ホワイル・マイ・ギター…」と「ヤー・ブルース」でのエリック・クラプトンの好演も印象的。

 以下次回に続く。

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