2014年5月21日水曜日

タモリ流インスタント・ラーメン・レシピの研究


■はじめに

タレントのタモリ(敬称略)は、料理好きとしても有名だ。ときどき番組の中で、自分流のレシピを紹介すると、そのつどネットなどで話題になっているらしい。
タモリのレシピの特徴は、びっくりするほど独創的でありながら、すごく簡単で、しかも間違いなく美味しいということだ。
そんなタモリ流レシピの中でも、もっとも評判になったのがスープから作るインスタント・ラーメンのレシピだろう。

ここでは、このラーメンのレシピについて、番組で紹介されたオリジナルのレシピと、最近出た『タモリめし』という本に紹介されているレシピ、そしてそれを私なりにアレンジしたレシピの三つを紹介しながら検討を加えてみようと思う。


■タモリについて

敬称は略しているけれども、私はタモリを敬愛している。
まず芸人として面白い。ただし私の好きなタモリは、お茶の間の人気者になるずっと以前の初期の彼だ。中州産業大学や全冷中やハナモゲラ語やソバヤソバーヤなどをやっていた頃のタモリ。知的で毒があって刺激的だった。ああ懐かしい。

しかしタモリはその後も、さまざまな分野でその多才ぶりを発揮してきた。たとえば、NHKの番組『ブラタモリ』で見せる街歩きの際の軽妙で独自な目線。それから日本坂道学会副会長としての坂道に対する独特の美学。そして、その多才さのひとつがタモリ流のユニークな料理の世界ということになる。
ようするに、タモリは根っからのこだわり人間であり、また何でも自分流に楽しんでしまう人なんだと思う。私もあやかりたいものだ。


■レシピその1 番組で紹介されたオリジナル・レシピ

2010314日放送の『笑っていいとも!増刊号』でタモリが披露したのが、このインスタント・ラーメンのレシピ。放送後、主にネット上で大きな評判を呼んだ。実際にこれを作ってみた人の記事が、いくつも公開されている。
私はこの番組そのものは見ていない。ネット上のいくつかの記事をまとめると、このときタモリが披露したレシピは、以下のようなものだったらしい。

《番組で紹介されたタモリ流インスタント・ラーメンのレシピ》

・材料

<
> 即席袋めん(メーカーは問わない)

<ベーススープ> 鶏がらスープの素、昆布だし、ほんだし、中華スープの素

<
味付けスープ> 醤油、ネギ油、ネギ

<トッピング> メンマ、チャーシュー

*量は全て目分量
*中華スープの素についてタモリは、ユウキ食品の「味玉(ウェイユー)」を推奨しているとのことだ

・作り方

1
ネギをきざむ。
2
お湯に鶏がらスープの素、昆布だし、ほんだし、中華スープの素を入れ、ベーススープを作る。
3
チャーシューを薄切りにする。厚みは5ミリがベストとか。
4
ラーメン丼に、醤油、ネギ油、きざみネギを入れ、味つけスープを作る。
5
別の鍋で茹でた麺を、湯切りして丼に入れる。
6.
丼にベーススープをそそぎ、チャーシューとメンマをのせて完成。

・筆者(御隠居)の所見

このレシピの大きな特徴は次の3点だろう。

①既製のダシを使っていること
しかも4種類も使っている。
鶏がらスープの素と中華スープの素(ビーフまたはポークのエキスがベース)は動物系ダシで、昆布だしとほんだしは魚介系ダシ。つまり、いわゆるダブル・スープを意図しているわけだ。しかもそれぞれ2種ずつ使って、味に奥行きを出そうとしていることがわかる。

ただ、こういう粉末のダシは、塩分が含まれているのが普通。あまり入れ過ぎると、醤油なしでもかなりしょっぱくなってしまう。ネットで実際に作った人の出来上がり写真を見ると、どれもスープの色がかなり薄め。たぶん醤油の量を少なめにしないと塩気が強くなり過ぎてしまうためだと思われる。

②材料の分量が目分量なこと
ベテランの料理好きならではのことなのだろう。
しかし、いちいち量(はか)らない方が豪快でプロっぽく見えるから、多少、演出があるのかもしれない。

③スープを、ベーススープと味付けスープの二つに分けて作ること
本当はここがいちばん注目される特徴かもしれない。しかし、これは、「本格」風を演出するためのタモリのナンチャッテ・パフォーマンスなのではないか、と私はみている。お店で作っているなら意味はあるが、自分で一人分だけ作るなら分ける意味はあまりないと思うからだ。

でもとにかく、このとおりに作ると、インスタント。ラーメンがびっくりするほど美味しいのは間違いない。


■レシピその2 レシピ本『タモリめし』掲載のレシピ

最近(20145月)『タモリめし』という本が出た。タモリが番組で紹介した数々の料理の作り方を、一冊にまとめた本である。著者はタモリ自身ではなくて、大場聖史という人の監修となっている。この人が、タモリが喋った内容を、レシピの形に整えたものだ。

さて、この本にも、もちろん上のインスタント・ラーメンのレシピが紹介されている。しかも、こちらには、もともと目分量のはずだった材料の分量が、きちんと指定されているのだ。その内容は以下のとおり。

《『タモリめし』掲載のインスタント・ラーメンのレシピ》

・材料

<
>
即席袋めん/1袋

<ベーススープ>
鶏がらスープの素/小さじ1
昆布だし/小さじ1/
ほんだし/小さじ1/
中華スープの素/小さじ1/
お湯/400cc

<
味付けスープ>
醤油/大さじ1
ネギ油/小さじ1
ネギ/適量

<トッピング>
メンマ/適量
チャーシュー/2枚

*中華スープの素の分量は、「作り方」の説明文中では、小さじ1/2となっている。どちらが正しいのか?
*ここでもやはりタモリのおすすめの中華スープの素が、ユウキ食品の「味玉(ウェイユー)」であることが、ポイントとして紹介されている。

・作り方

作り方は上のオリジナル・レシピとほぼ同じなので省略

ただし、ひとつだけ違うのは、丼に麺とベーススープを入れる順序。上のオリジナル・レシピと逆になっている。
こちらのレシピでは、味付けスープの入った丼に、①まず先にベーススープをそそぎ、②その後、麺を入れている。

この方が味付けスープを溶かしやすいのと、盛りつけたとき麺が見えた方が体裁としていいためだと思われる。

・筆者(御隠居)による所見

ダシの分量から、この監修者は、ダブル・スープのベースを、鶏がらスープにはっきりと置いてメリハリをつけようとしていることがわかる。
また、お湯400ccに対して醤油大さじ1となっているが、これはかなり醤油が多めの感じだ。濃いめの汁を麺にからめて食べ、麺を食べ終えた後は、汁そのものは残すという前提だと思う。
鶏がらベースで、醤油味濃いめ。この2点から、この監修者は、中華そばとも呼ばれていた昔風のラーメンをイメージしていることがわかる。タモリ自身のオリジナル・レシピでは、そこまではっきりした方向性は出していないような気がするのだが。


■レシピその3 タモリ風ラーメンの略式レシピ

上に紹介したタモリ流レシピで、以前私もラーメンを作って食べた。もちろん美味しかった。その後どんどん自分流にアレンジしてきたので、しばらくこのレシピのとおりに作ったことはなかった。
この記事を書くにあたり、またオリジナルどおりに作ってみようと思ったのだが、材料が足りない。中華スープの素を切らしていた。このところ鶏がらスープの素で代用していたのだ。

せっかくだからタモリ推奨のウェイユーを使おうと思って、近所のスーパーを2、3店見てみたが、どこにも置いていなかった。代わりにライヴァルのウェイパー(味覇)は必ず見かけた。以前は、ウェイユーと両方置いてあったはずだが、ウェイパーに駆逐されてしまったのだろうか?(間違ってたらゴメン)。

しかし、ウェイユーにしろ、ウェイパーにしろ、こういう練りタイプの本格的中華スープの素を常備しているお宅は、そんなに多くはないだろうと思われる。
それから考えてみると、ほんだしはあっても、粉末の昆布だしも持っている家も少ないのでは。

そんなこんなで、なるべくふつうにある材料で代用しするなどして、工夫したのが以下の略式レシピである。タモリ・レシピの基本精神(?)は尊重しながら、本格よりも実質本位で、より簡単により美味しくを目指している。

《タモリ風ラーメンの略式レシピ》

・材料

<
>
即席袋めん/1袋  または 生中華めん/1玉

*もともとは、インスタント・ラーメンのレシピだったわけだが、もはや袋めんにこだわらない。生の中華めんもスーパーで手軽に安く手に入るのだから、こちらの方がおすすめ。

<スープ>
鶏がらスープの素/小さじ1
昆布だし/1グラム  または 白だし/小さじ1
ほんだし/1グラム
中華スープの素/小さじ1/4  または その他のだし1グラ ム
醤油/大さじ1(お好みで調整)
ネギ油/小さじ1  または ごま油/小さじ1
お湯/500cc
野菜/適量  または 砂糖/1グラム

*スープは、ベーススープと味付けスープに分けて考えないことにする。一緒に作っても大差なし。
*中華スープの素は、鶏がらスープの素があれば持っていないことが多いと思われる。その場合は、その他のもので代用する。コンソメ、オニオンスープの素、貝柱スープの素、豚骨白湯スープの素、さば、いわし系のだし等。とにかく何か一種類入れる。
*湯を鍋で沸かしながら、野菜を煮込むと旨みと甘みが出て、より美味しくなる。野菜は、キャベツ、タマネギ、長ネギ、もやしなど。ない場合は、代わりに砂糖を入れると意外に美味しい。

<トッピング>
刻みネギ、メンマ、チャーシューなど(もしあれば)

*以下のようなものも入れると美味しい。
ハム、海苔、ごま、ニンニク(チューブ)、魚肉ソーセージ(これはとくにおすすめ)

・作り方

1
トッピングを用意する。
2
鍋に水と適当に切った野菜を入れて沸かす。
3 お湯が沸いたら、鶏がらスープの素、昆布だし、ほんだし、中華スープの素を入れて溶かす。
4
仕上げに醤油、ネギ油を入れて味を確認する。
5 別の鍋で麺を茹で、湯切りして丼に入れる
6.
丼にスープをそそぎ、トッピングをのせて完成。

・おまけ
以上の略式レシピは、タモリの本格志向からはちょっと外れてしまったかもしれない(カンベン)。しかし、とにかく美味しい。とくにスープが美味しい。一見あっさりのように見えて、いろいろのダシ成分のおかげで、けっこう濃厚な味わいだ。なので、中華めんの代わりに、ためしにスパゲッティを使ったら、これが意外な美味しさ。うどんやそばでもいいんじゃないだろうか。おためしあれ。


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