2014年5月12日月曜日

エルトン・ジョンのアルバムベスト5


<エルトン・ジョンのアルバム極私的ベスト5>

エルトンの最高傑作との定評のある『黄昏のレンガ路』ですが、私のランキングでは第1位ではありません。

第1位 『僕の歌は君の歌(Elton John)』(1970)
第2位 『マッドマン (Madman Across the Water)』 (1971)
第3位 『ホンキー・シャトー (Honky Château)』 (1972)
第4位 『エンプティ・スカイ (Empty Sky)』(1969年)
第5位 『黄昏のレンガ路 (Goodbye Yellow Brick Road)』 (1973)


<エルトン・ジョンの名曲ベスト5>

ついでに私の選ぶ<エルトン・ジョン・ベスト・ソング5>は、こんな感じ。

第1位 「僕の歌は君の歌(Your Song)」 (アルバム『僕の歌は君の歌』に収録)
第2位 「人生の壁Border Song)」 (アルバム『僕の歌は君の歌』に収録)
第3位 「イエス・イッツ・ミー(It's Me That You Need)」 (シングル、 アルバム『エンプティ・スカイ』にボーナス収録)
第4位 「フレンズ(Friends)」 (『フレンズ〜オリジナル・サウンドトラック』に収録)
第5位 「遅れないでいらっしゃい(Come Down in Time)」 (アルバム『エルトン・ジョン3』に収録)
次 点 「マッドマン (Madman Across The Water)オリジナル・ヴァージョン」 (アルバム『エルトン・ジョン3』にボーナス収録)

70年代の初めに、上記1位から4位までの曲を収めた『エルトン・ジョン・ベスト4』というコンパクト盤(33回転のシングル・サイズ盤)が出た。私はこれを買って愛聴したものだ。ネットを見ていたら、他にもそういう人がいたのだった(ブログ「A Day In The Life~懐かしき1曲」参照)。


■アルバムごとのメモ

『エンプティ・スカイ (Empty Sky)』(1969年)

エルトン・ジョンの記念すべきデヴュー・アルバムだが、今ひとつパッとしないアルバムではある。いろんなレヴューをみると、みんなこのアルバムを、エルトンの作品系列の中でどう扱ってよいのか戸惑っているようなフシがある。

私にもこのアルバムは、最初、全然ピンとこなかった。何を狙っているのかがよくわからない。しかし、ウィキペディアの解説中に、「プログレッシヴ・ロックの影響が色濃い」という記述を見つけて、何となくふに落ちた。
このアルバムの英国的な陰影と、チェンバロやフルートによるクラシカルなサウンドは、一種のプログレッシヴ・ロックと思って聴くとしっくり来る。冒頭のタイトル曲「うつろな空(Empty Sky)」とか、ラストの「ガリヴァーの追想 (Gulliver/Hay-Chewed/Reprise)」なんかは、もろにプログレ風だしね。
エルトンが、キング・クリムゾンやジェントル・ジャイアントのヴォーカリストのオーディションを受けたこととか、もともとエルトンという名前そのものもエルトン・ディーン(のちにソフト・マシーンに参加)からとった、なんていうプログレがらみのエピソードも、符合してくるのだった。

次作『僕の歌は君の歌』のオーケストラをバックにした格調の高い英国風とは違うが、このアルバムのややアクの強い英国臭も悪くない。もともとプログレ好きなもんで。

『僕の歌は君の歌(Elton John)』(1970)

 全編にクラシカルなストリングスが入っている格調高い一作。最初聴いたときは、ロック度が薄くて物足りなかったが、今ではこれがエルトンの最高傑作だと思っている。
何より私がこのアルバムにひかれるのは、いかにも英国的なシリアスで翳りのあるサウンドと、そして内省的で孤独感の漂うトーンだ。
何といっても「僕の歌は君の歌 (Your Song)」と「人生の壁 Border Song)」は名曲。

なお末尾にボーナス収録されたシングル曲「ロックン・ロール・マドンナ (Rock and Roll Madonna)」は、ローリング・ストーンズ
の「ホンキー・トンク・ウィメン」へのオマージュないしはパロディ(たぶん)。アルバム本編の雰囲気とは全然違う曲なのだが、なかなか悪くない。

『エルトン・ジョン3 Tumbleweed Connection)』 (1970)

前作のブリティッシュ・サウンドから一転、こちらはアメリカ西部への憧れをテーマにした、エルトン流カントリー・ロック・アルバムだ。
前作とのインターバルは、わずか半年。してみると、この2作は、ひとつの作品の裏表とも見える。つまり、前作がブリティッシュ・サイドで、こちらがアメリカン・サイド。
ただしとにかく地味な内容。表現意図が何となく空回りしているような感じだ。「遅れないでいらっしゃい (Come Down in Time)」とか、「故郷は心の慰め (Country Comfort)」のようなよい曲もあるのだが、全体としては、どうにも印象の薄いアルバム。 

『マッドマン (Madman Across the Water)』 (1971)

ふたたび重厚なストリングスをメインにすえて、前々作のようなシリアスで格調高い雰囲気に戻った作品。わたし的には、『僕の歌は君の歌』に次いで好きなアルバムだ。ただし曲作りにややこなれた感じがあって、『僕の歌は君の歌』で聴けるような瑞々しさはその分薄れている。

それから「可愛いダンサー (Tiny Dancer)」とか、タイトル曲「マッドマン (Madman Across The Water)」など、よい曲もあるのだが、その他の曲の魅力がちょっと弱い感じもする。でもとにかく「マッドマン」は名曲だ。

なお「マッドマン」のオリジナル・ヴァージョンというのが、『エルトン・ジョン3』にボーナス収録されている。オーケストラなしでバンド・サウンドをバックにしたヴァージョンだ。大きくフィーチャーされているミック・ロンソンのギターが素晴らしく、これもなかなか捨てがたい魅力的な演奏だ。

『ホンキー・シャトー (Honky Château)』 (1972)

それまでの重厚な英国調からサウンドを大転換、エルトンが世界戦略を開始したアルバム、と言われている。この試みは大成功、初の全米チャート1位を獲得し、以後、彼の快進撃が始まることになる。
しかし一方、英国風味が薄まっていくにつれ、私のエルトンへの興味はなくなっていったのだった。

たしかにひげ面のエルトンのジャケットや、ストリングスの代わりにホーンを導入したことなど、大きくイメージ・チェンジをしている。全体の曲調も、ライトでポップ。まさに売れ筋の音だ。
しかし、今あらためて聴くと、これはこれでなかなか悪くない。何より、全体に漂うそこはかとない哀愁が英国的で好ましい。そういえば見開きジャケットの内側に広がる風景も、荒涼としていてイギリスっぽかった。

ところで、どうでもいいことをいくつか。
ひとつは「スレイヴ」でのエルトンのヴォーカルが、ミック・ジャガーにちょっと似ているということ。もともとこの曲の曲調が、米南部志向期のストーンズに似ている。それに乗って歌うエルトンの、とくに声質と歌い回しに注目。似てるでしょ。
それともうひとつ、シングル・カットされた「ロケット・マン」は、デヴィッド・ボウイの「スペイス・オディティ」にインスパイアされたとしか思えないんだけど、もしかしてこれって常識?
ちなみに調べてみたら、この二つの曲は、プロデューサー(ガス・ダッジョン)が共通だった。そのせいもあるのかかも。

『ピアニストを撃つな! Don't Shoot Me, I'm Only the Piano Player (1973)

ウィキペディアによると、このアルバムのタイトルとジャケットデザインは、フランソワ・トリュフォー監督の1960年の映画『ピアニストを撃て』からインスパイアされたものとのことだ。エルトン自身がそう言っているのだろうか。もしそうなら仕方がないが、ちょっと疑問が残る。
もともとトリュフォーの(原作の)タイトルが、西部劇時代のアメリカの酒場に貼られていたという「ピアニストを撃たないで」という文句をもじったものだからだ。エルトンは、そこから直接引用しているのではないのだろうか。もちろんピアノ・プレイヤーである自分にひっかけているわけだ。

一部の曲でオーケストラが復活している。たとえば「罪人にあわれみを (Have Mercy on the Criminal)」などには、昔のようなシリアスな感じがある。しかし、全体としては、イギリス的哀愁味を残しつつ、前作よりもさらにライト&ポップ化が進んでいる。というわけで、エルトン・ジョンは、私の関心の範疇からどんどん遠いところへと離れていったのだった。

『黄昏のレンガ路 (Goodbye Yellow Brick Road)』 (1973)

私がエルトン・ジョンにすっかり興味がなくなってしまった頃に発売されたのが、このアルバムだった。
当時一応は聴いたけれども、そんなに面白いと思わなかった。ジャケットのセンスも今ひとつだし、2枚組というのも何だか無駄に重過ぎる。またオープニング曲が無意味に大仰で、聴く気が萎えてしまうのだ。
その後、これがエルトンの最高傑作ということになったが、最初の私の印象は、今もあまり変わっていない。

それでも、アルバムの前半はけっこうよい曲が並んでいる。「風の中の火のように (Candle in the Wind)」とか、「ベニーとジェッツ (Bennie and the Jets)」とか、タイトル曲「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード Goodbye Yellow Brick Road)」とか、旧作のリメイク「グレイ・シール (Grey Seal)」なんかは好きな曲だ。
しかし、この後は、だらだらと曲が続いて、どれもこれも同じに聴こえてしまう。やはり、こういうタイプの人の2枚組はダレる(私だけか?)。唯一、「土曜の夜は僕の生きがい (Saturday Night's Alright for Fighting)」は、トンガっていて好きだけど。

そんなこんなで、このアルバム以降のエルトン・ジョンとは、完全に縁が切れてしまった。
だいたいこの後のアルバムのジャケットがひどい。『キャプテン・ファンタスティック (Captain Fantastic and the Brown Dirt Cowboy)』(1975)は、まあ許せる。だけど、『カリブ (Caribou )』(1974)とか、『ロック・オブ・ザ・ウェスティーズ (Rock of the Westies)』 (1975)は、あのジャケでは手に取る気になれないよ。


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