2012年12月13日木曜日

実食「一汁無菜」 納豆でご飯

今回は納豆でご飯を食べる。
前回の「玉子でご飯」のときにも書いたように、私はご飯に納豆をかけるのは、あんまり好きではない。でも「好きなごはんのお供ランキング」(gooランキング、2011年5月)で、納豆は辛子明太子に続いて第2位。みんな納豆が大好きなのだ。
ということで今回は生玉子に続いて「みんなは大好きだけど、私はあまり好きじゃないので、ちょっとだけ手を加えて食べてみる」シリーズ(?)の第2回目。純粋納豆主義者のみなさんは御容赦を。

私がなぜご飯に納豆をかけるのがいやかというと、それはご飯を汚したくないからだ。ご飯はあくまで白いままで食べたい。
ネットを見ていると、同じようなことを感じている人はたくさんいるようだ。納豆は嫌いではないけれど、ご飯を汚すのがイヤで、納豆だけを別に食べる、という人がかなりの割合でいるらしい。私だけじゃなかったのだ。

しかし、こんなことを口に出すのは非常にはばかられる。何しろ私の住んでいるこの水戸を中心とする一帯は、言わずと知れた「納豆王国」だからだ。納豆を食べる量は全国で一位。その上にこの地方が全国に誇れるアイテムといったら「水戸黄門」とこの納豆くらいしかない。その意味でも納豆様々(さまさま)なのだ。
こんな土地で、もし「納豆はあんまり好きじゃない」なんてことを言ったらたいへんなことになる(…わけないか)。

納豆というのは、言うまでもないが強烈な個性を持った食べ物だ。ねばねばの食感とあの独特の発酵臭。人によって好き嫌いの差が激しいのも当然だ。何とか私が納豆を嫌いにならずに済んだのは、ひとえに「納豆王国」の住人であったからかもしれない。
とところでここで話は少し横道にそれる。「納豆料理」というものについてだ。
「納豆王国」に住んでいるせいで、いろいろな「納豆料理」というものを見聞きしてきたし、また実際に食べてもきた。何しろ当地には納豆料理の専門店まであるくらいだ。
たとえば、納豆チャーハン、納豆オムレツ、納豆の天ぷら、納豆のから揚げ、納豆餃子、納豆カレーなどなど。変わったところでは納豆の酢の物。さらに和え物系として、イカ納豆、タコ納豆、マグロ納豆、キムチ納豆等々とさまざまある。
また、茨城県北部はそばの産地でもあるのだが、この辺のそば屋には、ざるそばのツユに納豆を入れる「納豆そば」といメニューがある。さらに水戸駅のホームの立ち食いそば屋では、かけそばに納豆をのせた「納豆そば」というのも見かけた。
ついでにこれは料理ではないが、お土産品として、納豆飴、納豆せんべい、納豆スナック(うまか棒)なんかもある。

しかしこうした納豆料理についてつねづね感じていることがある。それは、納豆を料理するのは、そもそも無駄なんじゃはないかということだ。
納豆料理が美味しくないというわけではない。そうではなくて、たとえどんなふうに調理しようと、またどんなものと混ぜようと、ひと口食べれば、納豆の味が前面に出てきてしまうからだ。口の中はネバネバになり、あの独特の風味が口いっぱいに広がる。
納豆は個性が強烈過ぎるのだ。他の味はその陰にすっかりかくされてしまう。つまりは何を食べても同じ味。これじゃあ手間をかけても、あんまり意味がないのでは。

納豆料理としてではなくて、納豆単品のときも同じようなことが起こる。何品かあるおかずの中に納豆があると、その納豆を食べたとたん、口の中はネバネバでヌルヌル、ついでに箸もヌルヌル。食事は納豆の味だけになってしまう。
だから、私は納豆がある場合は、食事のいちばん最後に食べることにしているのだ。
納豆の食感というのは、そういう意味で他の食材と協調しない。だから結局、納豆はあくまでそのままで食べるべき、というか食べるしかないものなのだと思う。

納豆についてそんなことを感じている私が、ちょっと興味をそそられる話題が最近あった。今回もラジオなのだが、ちょっと面白いレシピを聴いたのだ。
日曜日の夕方のTBSラジオの番組「食卓応援隊」でのこと(11月25日放送)。この日のゲストの「幸せ料理研究家」相田幸二さんが次のようなレシピを紹介していた。番組のホーム・ページからそのまま引用してみる。

<塩納豆丼>

【作り方】
    熱々ご飯の上に納豆を混ぜずに乗せる
    その上にゴマ油と"こだわりの塩"をお好みの量かける
    ブラックペッパーと白い煎りゴマをかけて出来上がり!

ポイントは絶対に混ぜないこと。
ごはんの上に納豆とゴマ油と塩を乗せてたべること。
ゴマ油の風味を黒胡椒が引き締めて、新たな味わいが口の中に広がります。
納豆が苦手な方にもオススメですよ~! 

引用は以上。

ポイントとして「絶対に混ぜないこと」を強調しているのに注目だ。ネバリとか糸引きをなるべく抑えようという意図がわかる。
ネットで調べてみたらクック・パッドにもほぼ同様のレシピが紹介されていたが、そちらはこれらの材料をよく混ぜ合わせることになっていて、そこが決定的に違っている。

これならご飯の旨ささを損なうことなく納豆を美味しく食べられそうだ。というわけで、さっそく試してみることにした。
勢い込んだ私は、わざわざこのために新しく塩とごま油を買ってきた。いつも使っているものより少し値段が高めのものだ(上のレシピには「こだわりの塩」と書いてあったので)。
しかし、この二つは近所のスーパーでも上を見るとけっこういい値段のものがある。ふだんはあまり注目していないので、そんな「高級品」がスーパーに置いてあることにちょっと驚いた。

では、今回のメニューを紹介。
お米は富山産のコシヒカリ。近所のスーパーで売っていたもの。一番安い茨城産のコシヒカリが売り切れだったので、その次に安かったこれを買った。
味噌汁は、このところおなじみの「無添加・円熟こうじみそ」という名前のもの。長野県下諏訪町のひかり味噌製の信州味噌。近所のスーパーで安売りしていた。
今日の味噌汁の具材は小松菜とお豆腐。
かんじんの納豆は、「天狗納豆 大粒」という名前のもの。天狗納豆と言えば、水戸では有名な納豆メーカー(「総本家」と「水戸元祖」の2社あり)。てっきりそその製品かと思ったら、茨城県土浦市のひげた食品㈱の製品だった。
水戸のメーカーにそっくりな天狗の絵も描いてあって紛らわしい。商標上の問題はないのだろうか。
ちなみに水戸納豆と言えば「小粒」が特徴の一つ。なのに、「大粒」とうたっていて何か変だなあとは思ったのだ。50グラムのパックが2個のセット。当然安売りしていたもの。

塩は「和の豊塩(てしお)」(㈱日本海水製)。国産原料100パーセント使用が売りらしい。いつもはもっと安いものを使っているのだが、上に書いたように、ちょっといいものというつもりで買ってきた。
ごま油は「九鬼純正ヤマ七胡麻油」(三重県四日市市の九鬼産業㈱製)。いつもは「かどやの純正ごま油」を使っているのだが、これよりちょっとだけ値段が高めのものを選んでみた。
瓶のラベルを見ると九鬼産業は創業明治19年を誇っている。ついでに見てみたら、いつもの「純正ごま油」のメーカーであるかどや製油の方は、何とさらに古い安政5年創業とのこと。堂々たる老舗だったのだ。恐れいりました。

それではいよいよ実食。
ご飯は前回と同様に1.5合炊いてそれを二等分する。一回分のご飯は約240グラム。
納豆は40グラムのパックを三つセットにして売っているのが普通だが、今回買ったのは50グラムが2パックのセット。ご飯240グラムに納豆40グラムではちょっと少ないと思ったからだ。これでもまだややさびしい量かもしれない。

ただ前回の玉子のときにも感じたことだが、この場合の「おかず力」は結局、塩加減次第。
例によって事前に塩の分量を決めておこうと思った。前回の学習によると、ご飯のどんぶり一杯分として塩1グラムくらいまでなら許容範囲。
そこで、キッチン・スケールで試しに計ってみたら、1グラムの塩というのは見た目では相当の量だ。こんなにはいらないだろうと思ったので、様子を見て適宜にかけることにする。ごま油も同様に適宜ということに。

今日も前回に使ったちょっと大き目の深型の器をどんぶり代わりに使用する。
この器にご飯を盛りつける。キッチン・スケールで、1.5合のちょうど半分、240グラムをちゃんと計る。
ご飯の表面を平らにならし、そこへ、パックから納豆をあける。パックの形のまますっぽりと四角い納豆をご飯の上にのせるつもりだった。ところが粘り気が強くてパックからはがすようにしないと離れない。ご飯の上にぐずぐずと散った納豆をまん中辺に集める。名前のとおりかなりの大粒納豆だ。
その納豆にまずごま油をたらす。ご飯には直接かからないようにする。ご飯にかかると、たんなる「油めし」になってしまいそうなので。
次にその納豆の上に、塩を指でつまんで三回ほどまわしかけた。
さらにその上に、黒コショウと白ゴマをふりかける。この二つは、多少ご飯にかかっても気にしないでたっぷりとかける。納豆が、コショウとごまにまぶされて見えなくなるくらい。

では食べ始める。味噌汁をひとすすり。
納豆の周囲の白いご飯の部分から箸を入れ、納豆部分をそれにのせようとする。しかし粘り気が強力で、なかなかうまくのらない。
そこで納豆を少しずつほぐしてご飯と一緒に口に運ぶ。
まあ当然だけど、やっぱりこれは納豆だった。
たしかにごま油の風味が効いている。荒挽きの黒コショウと白ゴマの香りと食感が、プチプチ、サクサクとよいアクセントになっている。そして塩にはほのかな旨みを感じる。
でも結局、納豆の風味がそれらに勝ってしまっている。やっぱりこれは納豆ご飯だ。

たぶんごま油は風味を付け加えるだけではなく、納豆の匂いとネバネバをコーティングするはずなのだろう。だが、今回のこの納豆にはかなわなかったようだ。ネバネバに加えて、口の中はベタベタになる。
ただこの油は、ごま油にしては、かなりさらっとしている(少し高級品だからか?)。そして、やっぱり油と塩気のコンビには、ジャンク的な旨さがある。
結局、納豆ご飯の美味しさに、油と塩の旨みを足して食べている感じになった。

いつものようにどんぶり飯のペースはどんどん加速してしまう。何しろ油で口の中は滑らかになっているからなおさらだ。
食べ進んでいくと、やはり納豆が先になくなってしまった。
あとはご飯と器の底のほうごま油が少したまっているだけ。仕方がないので、この「油めし」にコショウをかけて、味噌汁をおかずに食べる。まあ、これもなかなかオツな味ではあるのだが。
ちなみにこちらもTBSラジオ「食卓応援隊」で以前に聞いた話だが、あるシェフが「ご飯のお供」のひとつとして、コショウを挙げていた。ご飯にかけると、ご飯の甘みが引き立つのだとか(私はあんまり感じないけど)。
そうこうしながら一杯目は完食。

さっそく炊飯器から残りのご飯を全部よそって二杯目を作成。
一杯目と同じに作った後、その上に刻みネギを散らしてみる。
納豆とごま油のせいでもたっとしている口の中を、少しでもシャッキリさせたかったのだ。

一杯目を反省して納豆が最後まで足りなくならないよう配分を考えながら食べる。ネギは香りはもちろん、歯応えのシャキシャキ感がなかなかよい。
もちろんご飯と納豆は出来るだけ混ぜないように心掛けているのだが、食べ進むと納豆がご飯の上に散ってしまう。無駄な抵抗はやめて、後半は「かっこむ」ことにする。
そして最後は口の周りまで油で汚しつつ二杯目も完食。

今回の結論。納豆は煮ても焼いても、どう転んでもやっぱり納豆だということ。
とにかく納豆は美味しくいただけた。とくに塩味なので、ストレートに豆の旨さを感じることができた。
ただこの食べ方、ご飯は納豆で汚さなかったものの、結局は油で汚してしまったことになる。まさに「塩油めし」状態。でもそれはそれで美味しかったので、ょしということにしよう。

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