2012年5月15日火曜日

レコ・コレ誌のベーシスト/ドラマー・ランキングを見てあれこれ

 愛読している『レコード・コレクターズ』誌の2012年6月号が発売された。特集は「20世紀のベスト・ベーシスト/ドラマー100」。前号のギタリスト・ランキング特集の続きとはいえ、やっぱりかなり地味な内容。これで売り上げの方は大丈夫なんだろうか。

前号のギタリスト・ランキングについて、あれこれ思いつくままに感想を書いてみた。これが意外と好評だったので(?)、今回も同様に、ランキングを見て思いついたことを書いてみようと、発売を待っていたのだが…。地味すぎて、あんまり書くこともないかな。

ベーシストとドラマーのランキングということで思い出すのは、私がロックを聴き始めた70年前後の頃に愛読していた『ミュージック・ライフ』誌だ。同誌では、ときどきバンドやミュージシャンの部門別ランキングというのをやっていた。
ヴォーカリストやギタリスト部門のランキングは、たしかに人気と実力をそれなりに反映しているように見えた。しかし、ベーシストやドラマー部門なんかは、結局、バンドのランキングからそれぞれのベーシストやドラマーを抜き出して、バンドの順番のまま並べただけみたいなものだった。つまり、プレイヤーの個人評価ではなくて、バンド本位のランキング。これじゃ、あんまり意味ないなと思ったことを思い出す。

さて、今回のレコ・コレ誌のランキングだが、ベーシスト第1位がポール・マッカートニーで、ドラマー第1位がジョン・ボーナムときた。さらに、ドラマー第2位が、リンゴ・スターで、ベーシストのちょっと下がった第8位にジョン・ポール・ジョーンズがいる。
ビートルズとレッド・ツエッペリン!あれあれ、これってさっき紹介した往年の『ミュージック・ライフ』誌とおんなじ個人ではなくてバンド人気本位のランキングじゃないの?
各人に添えられたコメントを見ると、テクニック的に優れている点や、影響関係について語られているけど、他の人がみんな同じ認識で票を投じたとは限らない。「バンド本位ランク」疑惑が、ちょっともやもやする。

しかし、ちなみにローリング・ストーンズ勢を見てみると、ビル・ワイマンがベーシスト15位、チャーリー・ワッツがドラマー8位と、意外にふるわない。
そしてそれより上位にザ・フーの二人が(意外な?)大健闘。キース・ムーンがドラマー3位で、ジョン・エントウィッスルがベーシスト4位だ。たしかにキース・ムーンのパワー全開のドラミングは、他にないスタイルだし私もすごいと思う。
ただ残念ながら私はフーが苦手。『フーズ・ネクスト』は好きだけど、『トミー』とか『四重人格』みたいなオペラ・スタイルは、聴いていてダレる。

それはともかくとして、世間的な人気はフーよりストーンズの方があきらかに上(でしょ?)。ということは、私の「バンド本位ランク」疑惑は、まとはずれであったか。
そしてこのあたりから、いきなりレコ・コレ誌カラーが満開となる。
ドラマー2位、ジェイムズ・ジェイマスン、同4位、アル・ジャクスンJR.、同5位、アール・パーマー、同6位、ハル・ブレインと続く。この人たちはみんな、50年代、60年代のソウル界やポップス界の実力派セッション・ミュージシャンとのこと。「ロックの人」である私には、正直なじみのない名前ばかりだ。
それと、ジャズ畑の人が多いのが気になる。前回同様、今回も「ロック/ポップスの世界に大きな影響を与えた人」と前説にはあるのだが、それにしては…。
ベーシスト7位のジャコ・パストリアスはまあ、ジョニ・ミッチェルとのコラボ・プレイがあったりするからしょうがないだろう。それと、ドラマー41位のトニー・ウィリアムスも、一応ジャズ・ロックをやっているから許そう。
しかし、たとえばベーシストでは、チャールズ・ミンガス(29位)、チャーリー・ヘイデン(47位)、ロン・カーター(54位)、ドラマーでは、エルヴィン・ジョーンズ(47位)なんかはどう転んでもジャズの人でしょう。
というようなわけで、前回同様今回のランキングも私には「ロック度」が薄めで、いまひとつ物足りないなあ。

それでも内容的には、巧い人も下手な人も、いろんなタイプの人が偏らずにうまくミックスされているとは思う。実力だけでみたら、セッション・ミュージシャンたちがきっとすごいはずだ。
たとえば、チャック・レイニー(ベーシスト3位)、ウィリー・ウィークス(ベーシスト12位)、スティーヴ・ガッド(ドラマー16位)、アンディー・ニューマーク(ドラマー22位)みたいな人たちだ。でも、チャック・レイニーは3位だけれど、そういう人たちがこぞって上位を占めているというわけでもない。

 それから、バランスという点で言うと、プログレ系の人の名前がけっこう目に付く。
 たとえばベーシストでは、クリス・スクワイア(11位)、トニー・レヴィン(21位)、ジョン・ウェットン(26位)、グレッグ・レイク(32位)、ヒュー・ホッパー(56位)、ロジャー・ウォーターズ(60位)など。あれれ、クリムゾン関係者のレヴィン、ウェットン、レイクの3人は、肝心のフリップ師のギタリスト・ランキング順位(38位)より上だぞ。
 ドラマーでは、ビル・ブラッフォード(7位)、カール・パーマー(25位)、フィル・コリンズ(27位)、チェスター・トンプソン(29位)、ロバート・ワイアット(34位)、マイケル・ジャイルズ(46位)、ニック・メイスン(51位)など。ブラッフォードもフリップ師よりだいぶ上だ。
 プログレ系の人はテクニシャンが多いから名前が挙がるのは当然とも言える。それと曲のつくりが、ブルース・ベースではないので、個性的なプレイが目に付きやすいからではないかとも思う。
あとはやっぱり実力はないけど「バンド本位ランク」かな。EL&Pのあの人とか、ピンク・フロイドの2人とかね。

さて私の好きなベーシストたちの気になる成績はどうか。
フリーのアンディ・フレイザーが第10位。ご立派。
フレットレスの二人、パーシー・ジョーンズ(ブランドX)が48位で、ミック・カーン(ジャパン)が31位と。ちゃんと入っていてよかった。
あと私は、フェリックス・パパラルディ(49位)のような、重厚で太い音のベースが好きだ。そのような特徴ある音色と言えば、私の中ではまず何をおいてもグランド・ファンク・レイルロードのメル・サッチャーの名が思い浮かぶのだが、もうさすがに過去の人ということで入らなかったか。無念。

私の好きなドラマーのタイプは、知的で、細かい一打一打まで神経が行き届いていて、メリハリがきっちりあるドラミングをする人だ。具体的には、どちらもクリムゾン関係者だが、マイケル・ジャイルズとビル・ブラッフォード。ブラッフォードは第7位と健闘したが、ジャイルズが46位に留まったのはちょっと残念。
こういうタイプと正反対なのが、肉体派のジョン・ボーナム(1位)やカール・パーマー(25位)だ。ボーナムのドタバタぶりや、パーマーの勢いまかせのロールを思い起こすと、「バンド本位ランク」疑惑がまたもや頭をもたげて…。まあいいか。

なお今号で私が特集よりも注目した記事が、シカゴの『ライヴ・イン・ジャパン』の紙ジャケ復刻の話題だった。さっそく発注してしまった

そういえばもう一人、好きなドラマーを忘れていた。
シカゴのダニエル・セラフィンだ。今回のランキングには陰も形もないけど。

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