2014年1月31日金曜日

ザ・バンド 『ニュー・イヤーズ・イヴ・コンサート』


私はザ・バンドの最高傑作は、『ミュージック・フロム・ビッグピンク』でも『ザ・バンド』でもなくて、断然『ロック・オブ・エイジズ』だと思っている。そして結局はこのライヴ・アルバムが、ザ・バンドというグループの到達点であり、また終着点であったとも思う。
1968年のデヴュー・アルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』と69年のセカンド『ザ・バンド』は、まさに神がかっていた。続く70年の『ステージ・フライト』と71年の『カフーツ』は、最初の2枚ほどではないにしても、このバンドならではの良さがあるアルバムだったと思う。
これらのアルバムの総集編であると同時に、さらにそれを越えるものとして『ロック・オブ・エイジズ』(72年)は作られている。

『ロック・オブ・エイジズ』以降に出たザ・バンドのアルバムは、御承知のとおり、どれも気が抜けたものばかりだ。73年の『ムーンドック・マチネー』、75年の『南十字星』(名盤と言う人もいる)、77年の『アイランズ』など。
また、ザ・バンドのライヴ演奏が聴けるアルバムとしては、他にディランとの『偉大なる復活』(74年)や、解散ライヴの『ラスト・ワルツ』(78年)などがあるが、いずれも『ロック・オブ・エイジズ』には遠く及ばない。
だから私の中で、ザ・バンドはまさに『ロックオブ・エイジズ』で頂点に達し、そしてそこで終わっているのだ。


<『ライヴ・アット・アカデミー・オブ・ミュージック 1971』について>

その『ロック・オブ・エイジズ』の拡大版が、『ライヴ・アット・アカデミー・オブ・ミュージック 1971』として昨年(2013年)の11月に発売された。CD4枚とDVD1枚の5枚組セット。『ロック・オブ・エイジズ』ファンの私としては、当然、注目せざるをえない。

『ロック・オブ・エイジズ』のもとになったのは、1971年の1228日から31日まで、ニューヨークのアカデミー・オブ・ミュージックで開かれた4夜連続のコンサートだ。
セット・リストは4夜ともほぼ同じ。2曲のアンコールも含めて毎夜2324曲が演奏された。一日だけアンコールが1曲多かった日があるのと、最終日にボブ・ディランが飛び入りして4曲共演したので、つごうこの一連のコンサートで演奏された曲目は29曲ということになる。

今回の『ライヴ・アット・アカデミー・オブ・ミュージック 1971』は、「ロック・オブ・エイジズ 完全版」(ディスク1&2)と1231日の演奏を丸ごと収録した「ニュー・イヤーズ・イヴ・コンサート(完全収録盤)」(ディスク3&4)とからなっている(DVDも1枚あるけどこれは無視)。
この内「ロック・オブ・エイジズ 完全版」は、この4夜に演奏された全29曲のベスト・テイクを収録したものだ。しかし、これが何とも中途半端な内容で、魅力が薄い。
その理由は大きく三つ。
① 29曲のうち28曲が既出音源であり、純粋にこれまで未発表だったのは「ストロベリー・ワイン」1曲のみだったこと。
② しかも、その29曲の配列が、セット・リストどおりの曲順ならまだしも、意図不明のランダムなものだったこと。
③ そして何より29曲の内、何と11曲が31日のニュー・イヤーズ・イヴ・コンサートからの音源だったこと。つまり、同じセットのディスク3&4と、11曲が同一音源でダブっているのだ。何だか間が抜けているでしょ。

というわけで、私はこのセットを買うのをパスした。
しかし、「ニュー・イヤーズ・イヴ・コンサート」の方は、やっぱり気になる。そこで、例によって友人に頼んで、ディスク3と4だけコピーしてもらったのだった。
ということで今回は、これを聴いての感想である。


<『ニュー・イャーズ・イヴ・コンサート』を聴いて>

ディスク3&4のタイトルは、英文標記では「New Year's Eve At The Academy Of Music 1971 (The Soundboard Mix)」、そしてこの邦題は「ニュー・イヤーズ イヴ コンサート(完全収録盤)」となっている。ここでは以下、『ニュー・イャーズ・イヴ・コンサート』と呼ぶことにする。
『ニュー・イャーズ・イヴ・コンサート』を通して聴いて一番驚いたのは、『ロック・オブ・エイジズ』とは、受ける印象が全然違うことだ。『ニュー・イャーズ・イヴ・コンサート』によって、『ロック・オブ・エイジズ』の全貌が明らかになると思いきや、この二つはまったくの別ものだったことがわかったのだ。

『ニュー・イャーズ・イヴ・コンサート』の音は、わざわざタイトルにサウンドボード・ミックスと添えてあるくらいだから、会場で実際に聴いている音に近いのだろう。とすると、『ロック・オブ・エイジズ』というのは、ライヴの記録ではなくて、ライヴの音源を素材にして作り上げた新たな作品だったということだ。このことについては、また後の方で触れることにする。
とはいえ『ニュー・イャーズ・イヴ・コンサート』を聴いていると、どうしても『ロック・オブ・エイジズ』との違いに耳がいってしまう。そこで両者を比較しながら『ニュー・イャーズ・イヴ・コンサート』の感想を述べていくことにしよう。

まず、これは中身とはまったく関係ないことなのだが、『ニュー・イャーズ・イヴ・コンサート』は、収録時間が長い。ディスク3が約50;分、ディスク4が約1時間18分で、トータル約2時間8分。私も歳をとったせいか、聴いていてなかなか集中力が続かない。『ロック・オブ・エイジズ』は、LP2枚組で、トータル1時間20分(現在ではこれがCD1枚に収められている)。このくらいが、やはりちょうどいいなあ。
ちなみにオールマンズのフィルモア・ライヴや、ツェッペリンのマジソン・スクェア・ガーデンのライヴなどでも、完全版が出たとき同じようなことを感じたものだ。

さてコンサート全体の印象としては、かなりゆったりとした感じを受ける。
激しい音響や、シャウトするヴォーカルや、聴衆を煽ったりすることなどは、もともとザ・バンドのライヴには無縁だ。しかし『ロック・オブ・エイジズ』には、ホーン・セクションの音も加わって、躍動感あふれるタイトな音という印象があった。だが、実際のステージは、ゆったりした印象で、曲によって緩やかに起伏をつけながら進行していくのだった。

『ロック・オブ・エイジズ』と『ニュー・イャーズ・イヴ・コンサート』とのこの印象の違いは、ホーン・セクションの強調の仕方の違いと、それから曲目の選び方による。
『ロック・オブ・エイジズ』からは、コンサートの全体にホーン・セクションが参加しているイメージを受けたものだ。しかし実際のコンサートでは、ホーン・セクションが加わっているのは、全体の約半分だけ。
コンサートは第1部と第2部に分かれており、第1部はザ・バンドのみの演奏、そして第2部がホーン・セクションが参加しての演奏になっている。
『ロック・オブ・エイジズ』は、このうちホーンが参加した曲を中心に構成されていたのだ。第2部とアンコールの計12曲は全て収録されているのに対し、ザ・バンドのみの第1部からは12曲中(31日は11曲だった)5曲しか選ばれていない。

さらにまた、『ニュー・イャーズ・イヴ・コンサート』で聴けるホーンの音は、かなり控えめだ。というかそれが実際にライヴの場で聴いているときの印象に近い。
つまり『ロック・オブ・エイジズ』では、ホーンの音を強調していたわけだ。その結果ホーンが主導して躍動感を生み出しているように聴こえた。たしかに、そういう曲もある。しかし、実際のコンサートでは、ザ・バンドの曲にあくまでホーンが彩を添えているという感じだつたのだろう。
たしかに、すでに完成している曲に後から加えたアレンジだから、本来ホーンが前面に出てくるはずはないのかもしれない。その意味で、岡田拓郎の次のような描写は、その辺の感じをうまく言い当てていることになる。
「バンドの演奏に乗ってあちこちから現れるホーンが互いに呼応し合い、ファンキーに場を熱くする。」(岡田「アラン・トゥーサンがガンボ風味で彩るホーン・セクション」 『レコード・コレクターズ』誌201312月号「ロック・オブ・エイジズ」特集)

ところで『ロック・オブ・エイジズ』の収録曲は全部で17曲。これまで、このうちの大半は31日のニュー・イヤーズ・イヴの演奏と言われてきた。しかし、実際には31日のテイクは7曲のみだった(それでも他の日のテイクよりは多いわけだが)。残りの10曲は、他の日のテイクが使用されたわけだ。31日に演奏されたこの10曲の演奏は、採用されなかったのだ。つまり他の日のテイクより出来が劣っていたことになる。でははたして、それはどのくらいダメなのか。

そんなことを事前に考えながら聴き始めたのだった。しかし、結果から言うと、それほど大きな違いはないと思う。
『ロック・オブ・エイジズ』でさんざん耳になじんだ曲が流れてくると、たしかにほっとする。収録されなかったヴァージョンだと、ギター・ソロの違いや、ヴォーカルの歌い回しの微妙な差などが、やはり耳につく。しかし、それでもそれほどの違和感はない。そして何より聴いているうちに、コンサートそのものにどんどん引き込まれてしまうのだった。結局、問題なし。

ただ、萩原健太が『レコード・コレクターズ』誌の「ロック・オブ・エイジズ」特集(201312月号)の記事中で指摘していたように、『ロック・オブ・エイジズ』に使用されていることになっている31日の演奏でも、『ロック・オブ・エイジズ』のヴァージョンと、微妙に違っているところがあったりする。
たとえば「ラグ・ママ・ラグ」。『ロック・オブ・エイジズ』収録のヴァージョンは、31日のテイクのはずなのだが、ヴォーカルも、ギターも、ホーンもみんな聴きなじんだ『ロック・オブ・エイジズ』と微妙に違っている。そして何よりガース・ハドソンのピアノ・ソロが決定的に違っている。何とも不思議&不可解。

以下、コンサートのパートごとに、感想や気がついたことなど。


■コンサート第1部(ディスク3)

『ロック・オブ・エイジズ』冒頭のあのおなじみのアナウンス(ホーン・セクションのメンバー紹介など)はなしで、いきなり「クリプル・クリーク(Up On Cripple Creek)」がスタート。あのアナウンスは、何と実際は第2部の冒頭だったのだった。

第1部は、ホーンなしのザ・バンドのみによる演奏。全11曲だが、他の日はもう1曲「ストロベリー・ワイン」が加わって、12曲だったらしい(『ロック・オブ・エイジズ』2004年版CDの宇田和弘のライナー)。
このうち『ロック・オブ・エイジズ』には、5曲が収録されている。

この第1部、とにかくゆったり、のんびりした印象だ。
たとえば「うわさ(The Rumor)」、とか「ロッキン・チェアー(Rockin' Chair)」みたいなスローな曲が、その印象を強くしている。
オープニングの「クリプル・クリーク」、2曲目「ザ・シェイプ・アイム・イン(The Shape I'm In)」に続く3曲目が、何とこの「うわさ」。
この曲は、『ステージ・フライト』のクロージング曲だ。アルバムのエンディングにまさにふさわしい哀愁あふれる、じつにまったりとした曲調だ。こんな曲を、いきなり幕開けの3曲目にもってくるとは、ふつうなら早過ぎる。
ちなみにこういうスローなタイプの曲は、『ロック・オブ・エイジズ』には収録されなかった。

しかし、それでも8曲目、タイトなリズムの「スモーク・シグナル(Smoke Signal)」あたりからステージはゆっくりと盛り上がりはじめる。つづくリチャード・マニュエルのヴォーカルが切ないディラン作の「アイ・シャル・ビー・リリースト(I Shall Be Released)」、そして、ゴスペル風な「ザ・ウェイト(The Weight)」で、第1部はハイライトを迎えるのだ。

その次の「ステージ・フライト(Stage Fright)」で第1部は幕となる。『ロック・オブ・エイジズ』に採用されているおなじみのテイクだ。
ところで、31日のこの「ステージ・フライト」には、御承知のとおり途中でピーピーとハウリング音が入っている。そういういわばキズがあるのに、なぜこの日のテイクをわざわざあのアルバムに採用したのだろう。それでもなお他の日よりも出来が良かったということなのだろうか。


■コンサート第2部+アンコール(ディスク4)

第2部は5人のホーン・セクションが加わっての演奏だ。ここで初めて、『ロック・オブ・エイジズ』冒頭のおなじみのアナウンスメントが聴ける。
曲は第2部本編が10曲と、アンコールが2曲。本編ラスト近くのガース・ハドソンのオルガン・ソロ曲「ジェネティック・メソッド」を除いて、あとはすべてホーン・セクションが参加している。この計12曲は、全て『ロック・オブ・エイジズ』に収録されている。

第2部の一発目は、「カーニヴァル(Life Is A Carnival)」。ホーンが大活躍の曲だ。『カフーツ』収録のザ・バンドとアラン・トゥーサンとの初コラボ曲。ホーン・セクションが存在感を強烈にアピールしている。
その後、「キング・ハーヴェスト(King Harvest (Has Surely Come))」、「カレドニア・ミッション(Caledonia Mission)」と演奏は続いていくのだが、上にも書いたように、ホーン・セクションの印象が『ロック・オブ・エイジズ』とかなり違う。音が控えめで弱い。その分、ザ・バンドの演奏が前面に出ている。ホーンはあくまでその後にいる感じ。

やがてホーン・セクションによる短いけれど哀切なイントロが付け加えられた「オールド・ディキシー・ダウン(The Night They Drove Old Dixie Down)」から「ロッキー越えて(Across The Great Divide)」のメドレー、そして続く「アンフェイスフル・サーヴァント(Unfaithful Servant)」へ。ちょうどヴォーカルがリヴォン・ヘルムから、リチャード・マニュエル、そしてリック・ダンコへとリレーするこのあたりで、コンサートは最高潮に達する。

会場がしみじみとした雰囲気になったところで、曲調は一転、次は、マーヴィン・ゲイのファンキーなカヴァー・ナンバー「ドント・ドゥ・イット(Don't Do It)」だ。
『ロック・オブ・エイジズ』の印象的なオープニング曲であり、再びホーン・セクションが躍動的なウネリを作り出している。
そして年越しチューン「ジェネティック・メソッド(The Genetic Method)」から、ラストの「チェスト・フィーヴァー(Chest Fever)」へとなだれ込んで、第2部の本編は終了となる。
それにしても、この大詰めの連続する2曲のうち、まさか後の「チェスト・フィーヴァー」だけが、他の日(1228日)の演奏だったとは、これまで誰も想像していなかったことだ。 
ここで聴ける31日の「チェスト・フィーヴァー」は、『ロック・オブ・エイジズ』のヴァージョンよりもややスローだ。途中のガース・ハドソンのオルガンのソロも、『ロック・オブ・エイジズ』収録のテイクのようなシャープな感じはないが、なかなか熱っぽい演奏で、これはこれなりによい。

ここでいったん幕となりその後、アンコールが2曲。『ロック・オブ・エイジズ』では、「チェスト・フィーヴァー」の後に、「ハング・アップ・マイ・ロックン・ロール・シューズ((I Don't Want To) Hang Up My Rock And Roll Shoes)」が来て終わっていた。が、実際にはその2曲の間にアンコール1曲目として「ラグ・ママ・ラグ(Rag Mama Rag)」が入っていたわけだ。

上にも書いたが、『ロック・オブ・エイジズ』の「ラグ・ママ・ラグ」は、31日のテイクのはずなのだがだいぶ違っている。
それはともかくこの曲は、テンポもよくてかなり盛り上がる。アルバム『ザ・バンド』収録曲だが、フィドルに回ったリック・ダンコの換わりにベース・パートを、もともとチューバが引き受けていた曲だ(『ザ・バンド』ではプロデューサーのジョン・サイモンが吹いていた)。31日の演奏でも、チューバがリズムをリードして、じつに軽快で気持のよい演奏になっている。


■ボブ・ディランとの共演(ディスク4)

31日のコンサートは、アンコールの後、サプライズ・ゲストのボブ・ディランが登場してザ・バンドと4曲共演している。
ザ・バンドとディランが共演するのは、2年前の69年のワイト島フェス以来のことだった。しかも、サプライズでの登場なわけだから、ステージにディランが姿を現したときに、盛大な拍手と歓声があったのでは、と想像するのだが、その瞬間はどういうわけかこのCDには記録されていない。いきなり曲が始まるのだ。

このときのディランとの4曲は、『ロック・オブ・エイジズ』の2001年リマスター盤のボーナス・ディスクで聴いていたので、あらためてここで聴けたという感慨はない。

曲はいずれもディラン作で、ベースメント・テープス・セッションから2曲(「ダウン・イン・ザ・フラッド(Down In The Flood)」、「ヘンリーには言うな(Don't Ya Tell Henry)」)と、ザ・バンドが『カフーツ』でカヴァーした「傑作をかく時(When I Paint My Masterpiece)」、そして、ディランの代表曲「ライク・ア・ローリング・ストーン(Like A Rolling Stone)」という内訳だ。

ディランのヴォーカルはやや甲高くて、あんまりよく声が出ていない感じ。「ヘンリーには言うな」は、リヴォン・ヘルムとのデュオで歌っているが、完全にディランの声は負けている。
だからこの共演は、それほど珍重するような出来ではないと思う。たださすがに「ライク・ア・ローリング・ストーン」のザ・バンドも加わったコーラスの部分を聴いていると、やっぱり胸が熱くなる。


<『ロック・オブ・エイジズ』再発見>

上にも書いたように『ニュー・イヤーズ・イヴ・コンサート』は、サウンドボード・ミックスということなので、実際に会場で聴いている音に近いと思われる。だとすると、これまで意識していなかったが『ロック・オブ・エイジズ』が、単なるライヴの記録ではなく、かなり意図的に作り込まれたアルバムだということが見えてくる。
その意図とは、ホーン入りのアンサンブルの躍動感に焦点を当てるということだ。コンサート第2部のホーン入りの曲を中心に選曲していることと、ホーンの音を前面に打ち出しているミックスの仕方が、そのことを示している。
ホーン・セクションを紹介するMCを冒頭に持ってきたのも、そのような意図によるものだろう。またこの意図のためにアルバムの曲順もうまく工夫されている。
まず、オープニングの「ドント・ドゥ・イット」は、ホーン・セクションによって躍動感を増幅させたファンキーなマーヴィン・ゲイのカヴァー曲だ。
そして、LP2枚の各サイドそれぞれの締めくくりは、とくにホーンが大活躍する弾けた曲ばかりだ。サイド1が「W.S.ウォルコット・メディシン・ショー」、サイド2が「ラグ・ママ・ラグ」、サイド3が「カーニヴァル」、そしてサイド4が「ハング・アップ・マイ・ロックン・ロール・シューズ」といったぐあいである。 

「ドント・ドゥ・イット」、「ハング・アップ・マイ・ロックン・ロール・シューズ」は、今回のコンサートのために、バンドの演奏と一体でホーンをアレンジしたと思われる。また「W.S.ウォルコット・メディシン・ショー」、「ラグ・ママ・ラグ」、「カーニヴァル」はオリジナル録音時からホーンが加わっていた曲。つまり、これらの曲は第2部の曲の中でも、とりわけホーンの活躍する余地が大きいものばかりなのだ。これらの曲を各サイドのラストに持ってくることによって、ホーンとのアンサンブルの印象は、より強められているのだと思う。


<おわりに>

『ロック・オブ・エイジズ』の密度やホーン・セクションとの強力なアンサンブルと比較してしまうと、『ニュー・イヤーズ・イヴ・コンサート』は、どうしてもやや散漫な感じがしてしまう。とくに、アンコールのあとに、ディランとのパートがあったりするのも、いかにも蛇足で散漫な印象をより強くしている。だからこそのセット売りだったのかもしれない。

しかし、絶頂期にあったこのバンドの音楽の深くて重厚で渋い魅力は十分に伝わってくる。彼らの音楽の底に流れる強靭でしぶというねりが、ホーン・セクションによって顕在化されている感じもする。その意味で、やはり『ニュー・イヤーズ・イヴ・コンサート』はいいアルバムと言えるだろう。


〔関連記事〕


0 件のコメント:

コメントを投稿