2013年12月8日日曜日

炒めスパ日記 おろしスパゲッティの巻


<まえがき 炒めスパゲッティについて>

このところ炒めスパゲッティに凝っている。炒めスパゲッティとは、スパゲッティを茹でてから具材と炒め合わせる料理のこと。麺は太麺(2,2ミリ)を使う。
本場のパスタは、ソースと和えたりするが、炒めるということはしない。だから炒めて作るスパゲッティは、日本独自の料理ということになる。なので私は、あえてパスタとは呼ばないことにしている。
昔々の日本におけるスパゲッティは、ミート・ソースとナポリタンしかなくて、麺は茹でておいたものを、あらためてフライパンで炒めていた。だからかつてこれを食べていた人にとって、炒めスパゲッティは懐かしい味でもあるのだ。
いずれにしても、炒めスパゲッティは、「高級」でも「本格」でもなく、ようするにB級でジャンク系の食べ物なのである。

そんなB級グルメの炒めスパゲッティの有名店が銀座のジャポネ。首都高速の高架下にあるこのカウンターだけの小さな店には、つねに行列が出来ている。この店の特徴は、とにかく安くて量が多いこと。そしてもうひとつ、味付けが多彩なことだ。どのメニューも茹でおいた麺をフライパンで炒めるのだが、しょう油、塩、明太子、梅のりなどの和風から、ザーサイ入りの中華風(メニュー名「チャイナ」)、カレーをかけたインド風(メニュー名「インディアン))、そしてもちろんナポリタンもある。

この店の味を自宅で食べたくて、自分で作り始めたのが最初だった。そのうちに、ジャポネの再現だけでなく、いろいろな味にチャレンジするようになった。
これがじつに楽しい。たとえばゆかりや塩昆布など、日本独特のものを味付けに使ってみたり、長ネギの緑の固いところだけを具材にしてみたり…。それぞれに新しい美味しさがあった。それにしても、どんな味も受け入れてしまうスパゲッティの懐の深さには、あらためて驚いてしまう。

工夫の結果、わりあいよく出来たレシピは、このブログでときどき紹介してきた。しかしその陰には、いくつもの失敗作もあったのだ。そして、そんな工夫と研究の日々は、さらにこれからも続きそうである。


■■ ○月×日 おろし炒めスパを作るが失敗

大根おろしが、わりと好きだ。
そこで大根おろしを炒めたスパゲッティにからめてみようと思いつく。イメージとしては、焼肉やハンバーグのおろしソースといった感じ。

いつものように麺を茹で、並行してフライパンで具材を炒める。麺を13分茹でてから湯を切る。これをフライパンに入れて具材と一緒に2,3分炒める。おろしソースをかけるわけだから、味付けは塩少々だけにする。

ところで大根おろしの栄養は、かなりデリケート。とくに薬効があると言われる辛味成分は、おろした直後からどんどん失われていくらしい。だから使う直前におろすものとされているわけだ。
またビタミンCも含まれているが、これはもちろん加熱すると壊れてしまう。
だから事前に大根をおろしておくわけにはいかないのだ。しかしそうなると、麺を茹でつつ具材を炒めながら、さらに大根をおろすわけで、かなり忙しい。やっぱり具材を少し焦がしてしまう。

何とか大量のおろしが完成。ほとんど水分だが、これを絞ると栄養分を捨ててしまうことになる。なので、いっさい水分は切らないで使うことにする。またビタミンCのこともあるので、温めずに冷たいまま使うことにする。
さてこれに何で味をつけるか。おろしソースのイメージなので焼肉のタレを加えてみる。これをお皿に盛った炒めスパゲッティにドバッとかけた。外観はなかなかいい感じだ。

しかし、たっぷりの冷たいおろしのせいで、せっかくの熱々の麺がすっかり冷やされてしまった。まあ考えてみれば当然だ。しかも、大量に含まれていた水分で、びちゃびちゃ状態になり、麺に絡んでいた油が洗い流されてしまう。そうなると風味が何とも物足りない。やっぱり、ある程度水分は切ったほうがいいみたいだ。
というわけで失敗。それでも、もちろんちゃんと全部食べた。


■■ ○月△日 おろしはトッピングのつもりで

再度おろしスパに挑戦。今回は、やはりおろしの汁を軽く切ることにする。おろした大根を、ザルにそっとあける。そのまま絞ったりしないで、自然に水分が下に落ちるのにまかせる。

それから、大根おろしはソースではなく、トッピングとして考えることにした。麺にちゃんと味をつけて、もっとこってりした感じにしたかったからだ。
おろしには、おろしの分の味付けしかしない。ソースではないので、スパゲッティの分の味まではつけないわけだ。今回は、おろしの味はしょう油味にする。

スパゲッティの味は、この間、考えついた基本のしょう油味。これは、しょう油と、だし粉と、マヨネーズ少々を使う。とても美味しい。
お皿に盛ったこの基本のスパゲッティに、ザルで水分を軽く切ったおろしをのせる。そしておろしには、しょう油をひと回したらした。

こうして一応それなりに美味しいものができた。しかし、ビックリするほどでもない。やっぱり麺が少し冷めてしまうのと、おろしと麺のからみ具合が今ひとつなのがちょっと気になる。


■■ ○月○日 発想を変えておろしで「つけスパ」

ときどき大根があまっているとき、おろしそばを作ることがある。大量の大根おろしに麺つゆをかけ、これをそのままつけ汁代わりにしてもりそばを食べるのだ。そばにたっぷりとおろしをからめる。そばを食べるというより、むしろ大根おろしを食べている感じ。私にとって、これは大根おろしの最高に美味しい食べ方だ。

これと同じやり方で、炒めたスパゲッティをつけ麺として食べたらどうだろうと思いついた。
そもそも「つけスパゲッティ」というのは、なかなかユニークな思い付きではなかろうか。と思って、ネットで調べて見たら、何とそういうメニューはすでにたくさん紹介されていた。しかも何と、それ用の麺とソースも市販されているのだった。驚いた。でも、大根おろしをつけ汁にする例は、さすがにないようだった。

気を取り直して製作開始。
冷たいつけ汁につけると、麺も冷えてちょっと食感が固くなる。そこで麺はあらかじめ長めに茹でて、やわらかめにしておく。とりあえず、ふつうなら13分のところを16分にしてみる。
つけ麺の場合の麺は、水にさらして冷たいのがふつうだ。しかしこの場合のスパゲッティは、茹でてからいつものように炒めて、温かいまま食べることにする。一種の「あつもり」だ。ただしつけ麺なので、具材は取りあえずなし。
フライパンに油をひいて麺を炒めながら、塩としょう油だけで下味を付けてみた。つけ汁につけるときに洗い落とされてしまうかもしれないのだが。しょう油が焦げて香ばしい。

この「素(す)」炒めスパゲッティ」をお皿に盛る。
ちょっと味をみてみたら、これが何とも美味しい。まさにシンプルな美味しさだ。シンプル&ジャンク。大量の大根おろしは、深めの鉢に盛り、麺つゆを加えておく。
さて、いただきます。今回はやはりフォークではなくてお箸を使う。麺を数本ずつ取っては、おろしにからめて食べる。
美味しい。下味もちゃんと効いているし、油分もあってさっぱりし過ぎない。麺の固さもちょうど良い。
ときどき、おろしをつけないで「素」炒めスパゲッテイとして食べる。これがまた美味しい。ちょうどよい口直しになる。
大根おろしと一緒に食べる食べ方としては、これがいちばんだと思った。


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